連載記事 菱沼雅博
第6回 校正、測定システム解析、試験所

本稿は月刊アイソス2019年9月号に掲載された菱沼雅博氏(一般財団法人日本品質保証機構 審査事業センター 品質審査部 参与)執筆の連載記事『IATF 16949 ワンポイントレッスン』第6回の全文です。(本誌編集部)

今回は“測定”に関係する事項、特にIATF 16949:2016要求事項のうち7.1.5.1.1測定システム解析、7.1.5.2測定のトレーサビリティ、7.1.5.3.1内部試験所、7.1.5.3.2 外部試験所について解説する。“測定”は科学、技術、品質保証等々において、その基礎を支える行為である。20世紀は物理学の世紀と呼ばれ、革命的な理論が花開いた。それらは、光速度不変、熱放射といった実験による測定結果と正確に一致した。高速で運動する物体は長さが縮む、時間が遅れる(相対性理論)、物質は確率的にしか存在しない(量子力学)ように、理論から導かれる結論がどれほど常識外であっても正確に実験結果と一致することによって真理とされている。近年のHIGGS粒子、ニュートリノの観測などは、巨大加速器・スーパーカミオカンデなどの進歩に依存するのである。

自動車の設計開発においても、個々の実験データの積み重ねがその基礎を支えている。例えば、強度試験・耐久試験・機能試験等々、その正確な測定結果がなければ設計品質を保証することにはならない。そして、品質マネジメントシステムにおいては、主として品質保証の領域で測定の重要性が強調されている。そもそも、品質とは良いか悪いかを測れることなのである。例えば、ピカソとルノワールでどちらの品質が良いかなどといった問いは意味がない。それは、良いか悪いかを測ることができないからである。

1. 校正 (IATF 16949:2016 7.1.5.2測定のトレーサビリティ)

校正が必要とされるものは、“測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合又は組織がそれを測定結果の妥当性に信頼を与えるための不可欠な要素とみなす場合”である。“測定結果の妥当性に信頼を与える”とは、通常、製品を測定しそれによって品質保証している場合を指す。工程パラメータの測定等は該当しないと思われるが、例えば特殊工程においては、検査によって品質特性値が計測できず、工程パラメータの管理によって製品品質を保証している場合などには該当することがある。

校正とは、国際計量標準又は国家計量標準のような計量標準にトレーサブルであることを確認することである。例えば、質量の国際計量標準は、基礎物理定数(プランク定数)に基づく基準である。したがって、電子天秤のような測定器はすべてがこの計量標準にトレーサブルであることが証明されることが校正である。また、長さ(メートル)・時間(秒)も同様である。

校正の方法においては、3点校正が推奨されている。例えば、ノギス・マイクロメータなどにおいて測定の実用域が5㎜〜10㎜である場合、その実用域を挟んで3点(例えば2㎜、8㎜、12㎜)で校正することが望ましい。このことによって、測定の直線性が確認できるのである。

2. 測定システム解析(MSA)(IATF 16949:2016 7.1.5.1.1 測定システム解析)

校正が測定器そのものの正確性を問題にしているのに対し、測定システム解析は、測定システムの変動要因SWIPE、すなわちStandard(標準器)、Work piece(部品)、Instrument(測定器)、Person(人)、Environment(環境)を考慮して、測定システムのばらつきを解析することを指す。したがって、校正が試験所のような管理された環境で行われるのに対し、測定システム解析は実際に使用される場所、実際に使用する人によって行われるのである。

測定システム解析によって、毎回同じ測定値を示すかどうかという機器そのもののばらつき(equipment variation)や、測定する要員による機器の使い方、読み取りのばらつき(appraiser variation)が、ある範囲に入っていることを証明する必要がある。そのために、統計的調査を実施しなければならないことが要求されている。MSAではコントロールプランに引用されている測定システムを適用することが要求されている。したがって、開発時の測定機器などは適用対象外である。また、目視検査、Go-no goゲージ検査のような計数値検査、引張強度検査のような破壊検査も原則として対象となる。しかし、寸法特性のような計量値に対するGRR(Gage R & R)という手法が最もよく使用され、MSAにおいて光りものと呼ばれる。

規格7.1.5.1.1では“各種の(each type of)検査、測定及び試験設備システム”としているので、全ての測定機器及び試験装置システムが対象というわけではない。例えばノギス、マイクロメータ等に関して代表的なものを選択して実施すればよい。ただし、毎回同じ測定器ではなく、ローテーションを考慮するとよい。同じ特性(例:測定範囲、分解能、繰返し性など)をもつ設備は単一グループとし、サンプル設備(同種ゲージの代表)を統計的調査で用いることができる。

使用する解析方法及び合否判定基準は、レファレンスマニュアル(AIAG MSAマニュアルなど)がある場合には、それに適合しなければならない。特に、顧客の生産部品承認プロセス(PPAPなど)で測定システム解析の実施、データの提出が要求されている場合には、初回納入前だけでなく、定期的に実施、データ保管及び提出が必要となる。特殊特性に関して、MSA実施を要求される場合が多い。

代替方法による場合は、顧客承諾の記録を、代替の測定システム解析の結果とともに保持しなければならない。

3. 内部試験所 (IATF 16949:2016 7.1.5.3.1 内部試験所)

組織の内部における試験所は内部試験所とされ、試験/校正を請け負って実施する。内部試験所は、要求される検査、試験又は校正サービスを実行する能力を含む、定められた適用範囲をもたなければならない。試験所適用範囲は、定義に従って、次の三つの事項を含む文書にし、品質マネジメントシステム文書に含めなければならない。

• 試験所が実行するために適格性確認された、特定の試験、評価及び校正
• 上記を実行するために用いる設備のリスト
• 上記を実行する方法及び規格のリスト

試験所は、 最低限、次の事項に対する要求事項を規定し、実施する。

a): 試験所管理規定を本箇条の要求事項に従って適切に維持する。
- 試験/校正される測定機器の受領、識別、取扱い、保護、保管、廃棄
- 試験所の環境条件(無菌状態、埃、電磁障害、放射線、湿度、電源、温度、騒音、振動など)
b): 適格性確認を考慮した試験所要員の力量を明確にする。アウトプットの判断をする要員は、試験/校正に関して専門的な知識及び経験が必要である。
c): 実施する製品の試験を定める。
d): 該当する規格(ASTM、ENなどのような)に基づいて試験を実行する能力を明確にする。通常、サンプリング方法を含む試験/校正方法が記載されている。それに則った試験/校正ができる能力を事前に検証しておく。国家標準又は国際標準が存在しない場合、組織は、測定システムの能力を検証する方法を定めて実施する。
e): 顧客要求事項を明確にする。
f): 関係する記録をレビューする。


4. 外部試験所(IATF 16949:2016 7.1.5.3.2 外部試験所)

外部試験所は、次のいずれかを満たしていなければならない。

• ISO/IEC 17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)又はこれと同等の国内基準で認定されている。
• 顧客の審査又は顧客が認めた第二者審査で、上記と同等と認められている。ISO/IEC 17025 又はこれと同等の国内基準には、計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)がある。できれば、“ISO/IEC 17025 又はこれと同等の国内基準”で認定された試験所が望ましい。

規格7.1.5.3.2の“校正又は試験報告書の認証書は、国家認定機関のマークを含んでいなければならない”とは、認定試験所でも ISO/IEC 17025 の方法によらず一般校正もできるが、その場合は国家認定機関のマークは付かないので、不適合の根拠となる。したがって、認定試験所を使うということは所要の方法で校正、試験を行うという意味である。

国家認定機関の認定マーク(“認定ロゴ”や“認定記号”とも呼ばれる)が、提供された検査、試験、校正サービスが認定範囲に従って行われ、ISO/IEC 17025の要求事項を遵守しており、国家認定機関の監督下にあることを示す文書化した証拠となる。

検査又は試験設備製造業者は、検査又は試験設備の設計及び製造の一環として、校正の要求事項を満たすために、設備を維持し調整する方法論を開発した。したがって、製造元である検査及び試験設備の製造業者は、当製造業者が設計し製造した設備を校正することができる。ISO/IEC 17025認定試験所が利用できない場合は、測定機器の製造業者に校正を依頼してもよいが、7.1.5.3.1の内部試験所の要求事項(試験所適用範囲など)を満たしていることを確認する必要がある。