連載記事 菱沼雅博
第11回 改善

本稿は月刊アイソス2020年2月号に掲載された菱沼雅博氏(一般財団法人日本品質保証機構 審査事業センター 品質審査部 参与)執筆の連載記事『IATF 16949 ワンポイントレッスン』第11回の全文です。(本誌編集部)

今回は改善について解説する。そもそも日本の品質管理は改善が主要な活動内容であり、それは諸外国でも「KAIZEN」として周知されている。しかし当初のISO 9001ではこの改善に対する規定は明確ではなかった。そして、ISO 9001:2000において主要な内容として規定された。IATF 16949においてはQS-9000、ISO/TS 16949の流れを継承してこの改善が強調されている。改善には様々な方法論、関連事項があるが、規格要求事項に従って考察していこう。

1. 是正処置(JIS Q 9001:2015 10.2.1,10.2.2 不適合及び是正処置)

是正処置の要求事項は、検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の再発を防止するために、組織がその原因を除去する活動を行うことを意図している。

不適合とは、“要求事項を満たしていないこと”(ISO 9000)である。修正とは、“検出された不適合を除去するための処置”(ISO 9000)である。是正処置とは、“不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置”(ISO 9000)である。これらの定義は簡単なようであるが、しばしば守られていない。是正処置といいながら、修正にとどまっているケースが多くある。

“是正処置は、検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない”というのは、どのような問題が下記のe)又は f)に該当するか、影響に応じて決定することを意味する。したがって、特殊特性に関する不適合又は顧客に流出した不適合の場合には必須、工程内で偶発的に発生した軽微な不適合の場合にはそこまで至らないといった判断基準があってもよい。

不適合が発生した場合、次の事項を実施する。

a):修正を実施する。
1) 不適合の状態を除去する処置をとる。
2) 識別、分別など、起こった結果に対処する。

b):是正処置をとる必要性を評価し、実施する。
1) 不適合の現状把握、分析を行う。
2) 不適合の原因を特定する。
3)類似の工程又は製品にその不適合が発生する可能性を明確にする。

c):原因を除去する処置(是正処置)を実施する。

d):とった全ての是正処置の有効性(計画どおりの結果か否か)をレビューする。

e):品質マネジメントシステムの計画の策定段階で決定したリスク及び機会を更新する。

f):必要な場合、品質マネジメントシステムを変更する。

さらに、次に示す事項の証拠として、記録を保持する。

a):不適合の性質(顧客苦情、監査所見など)及びそれに対してとった処置

b):是正処置の結果(有効性)

2. 問題解決(IATF 16949:2016 10.2.3 問題解決)

ISO 9001で要求されている是正処置に加えて、IATF 16949では問題解決のプロセスを要求している。規格要求事項は、是正処置の手順に関して、組織が問題解決のプロセスをもって、また顧客の指定するプロセス、ツール、又は問題解決のシステムがある場合にはそれらを使用して、活動することを意図している。

“問題解決のための定められたプロセス”であるから、インプット及びアウトプットを明確にし、手順に加えて、実施する責任部署、解析のための資源、評価基準を明確にしておく必要がある。

“顧客の指定するプロセス、ツール、又は問題解決のシステム”として、ほとんどの自動車メーカーは固有のものをもっており、是正処置の結果報告を要求しているので、それに従う必要がある。この箇条は、IATF OEMの顧客固有要求事項を、最低限、集約することを促進するものである。

組織の問題解決に対するプロセスは、次のことを考慮する。

• 問題の様々なタイプ及び規模
• 不適合なアウトプット
• 体系的是正処置及び有効性検証
• 文書化した情報のレビュー及び更新

3. ポカヨケ(IATF 16949:2016 10.2.4 ポカヨケ)

人為的ミス(human error)は、いくら注意してもゼロにはできない。人為的ミスが起こったとしても、その影響が引き続くプロセス、最終的には顧客に及ばないようにすることがポカヨケである。IATF 16949において本項が要求されている理由は、是正処置において、しばしば“教育訓練の徹底”で終わっている例が見られるからである。特に、特殊特性に関わるような不適合が“教育訓練の徹底”で是正されたとすると十分とはいえない。主要な原因が人為的ミスの場合には、費用対効果の問題はあるものの、できるだけ人為的ミスが起こらない又はその影響が除去される対策にもっていく必要がある。

規格要求事項は、是正処置のプロセスに関して、組織がポカヨケの方法を使用して、活動を行うことを意図している。ポカヨケは error proofing の訳語であるが、error proofing の定義は、“不適合製品を製造しないための、製品及び製造工程の設計・開発”である。この定義によると、逆向きには取り付けられない形状の製品設計、構成部品が欠品又は異品のときはラインが止まってしまうような製造工程設計が該当する。そして、不適合製品を自動判定して排除するようなものは該当しない。一方、APQPマニュアルでは、そのようなものを mistake proofing と呼んでいる。日本企業においては、どちらもポカヨケとしているケースが散見される。ここは、あまりこだわる必要はないであろう。

この箇条は、ポカヨケに対するアプローチを強化し顧客固有要求事項を集約したものである。組織は、ポカヨケ装置、方法の必要性又は機会を特定した上で、それらを設計し実施する必要がある。

したがって“適切なポカヨケ手法の活用について決定する文書化したプロセス”が要求され、そのプロセスに基づいてポカヨケを決定することが必要である

。FMEAには、その方法が発生度(予防管理)又は検出度(検出管理)に影響を与えるかを文書化することになる。

コントロールプランには、ポカヨケ装置の試験頻度を含める。そのテスト結果の記録は維持する。チャレンジ部品(マスター部品)を使用する場合は、適切に識別し校正する。ポカヨケ装置の故障に対しては、8.5.6.1.1(工程管理の一時的変更)に規定するような対応計画をもつ。

4. 継続的改善 (IATF 16949:2016)

10.3 継続的改善 (JIS Q 9001:2015)
組織は,品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善しなければならない.
組織は,継続的改善の一環として取り組まなければならない必要性又は機会があるかどうかを明確にするために,分析及び評価の結果並びにマネジメントレビューからのアウトプットを検討しなければならない.

10.3.1 継続的改善−補足
組織は,継続的改善の文書化したプロセスをもたなければならない.組織は,このプロセスに次の事項を含めなければならない.
a) 使用される方法論,目標,評価指標,有効性及び文書化した情報の明確化
b) 工程ばらつき及び無駄の削減に重点を置いた,製造工程の改善計画
c) リスク分析(FMEAのような)

注記 継続的改善は,製造工程が統計的に能力をもち安定してから,又は製品特性が予測可能で顧客要求事項を満たしてから,実施される.


規格要求事項は、品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善するために、文書化したプロセスを確立し、実施することを意図している。TPM、リーン、シックスシグマ及び他の方法論の使用は、継続的に改善の機会を特定し体系的アプローチで取り組む。

継続的改善とは“パフォーマンスを向上するために繰り返し行われる活動”(ISO 9000)であり、ここでは品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善するために、分析及び評価の結果並びにマネジメントレビューからのアウトプットを検討することが要求されている。9.1.3 分析及び評価の結果は、“g)品質マネジメントシステムの改善の必要性”を導くものである。さらに次の事項を行う。

a): 改善のために使用する方法論(問題解決法、統計的手法など)、どこまで改善するかの目標及び評価指標、有効性及び文書化した情報(品質方針に沿って設定した品質目標の達成のための計画、有効性検証及び文書化が参考となる)を明確化することを、本プロセスに含める。

b): 製造工程の改善に特化した要求事項である。IATF 16949が製造サイトに適用されることからもわかるように、改善においてもIATF 16949では製造工程改善(工程ばらつき及び無駄の削減)に重点が置かれている。改善の対象としては、特殊特性などの顧客が重視している特性の改善を優先させる必要がある。

注記でいう“製造工程が統計的に能力をもち安定してから、又は製品特性が予測可能で顧客要求事項を満たしてから”とは、“工程能力があり、かつ、安定している”状態を意味している。すなわち“製造工程能力(Cpk)が基準値(1.33、1.67など顧客要求がある場合がある)以上で、管理図上、特別原因に伴う異常が出ていない”状態ではじめて継続的改善が行われることになることを意味している。工程能力不足の状態又は管理図で異常がある状態に対処するのは、是正処置である。そのような是正処置を繰り返し行うことを“継続的改善”と呼んでいる組織が多いので、この注記が加えられた。

c): FMEAのようなリスク分析は、常に改善のインプットとなる。

上記を文書化したプロセスを確立する。