連載記事 菱沼雅博
第12回(最終回) IATF承認取得及び維持のためのルール第5版に基づく運用

本稿は月刊アイソス2020年3月号に掲載された菱沼雅博氏(一般財団法人日本品質保証機構 審査事業センター 品質審査部 参与)執筆の連載記事『IATF 16949 ワンポイントレッスン』第12回(最終回)の全文です。(本誌編集部)

最終回は、IATF承認取得及び維持のためのルール第5版(以下、ルール第5版)について解説する。IATF 16949規格が、理想とする状態を表現しているのに対し、このルール第5版はそれを実現する手続きを規定している。刑事事件に例えると、刑法には“人を殺した者は死刑又は無期、若しくは5年以上の懲役に処する”と規定している。それを実現するためには、犯罪捜査、被疑者取調べ、告訴、裁判を経て確定判決を得た上で刑を執行することになる。このような手続きを定めた法規が刑事訴訟法であり、それがなければ正義は実現されないのである。認証制度においても、審査、不適合の検出、是正処置の実施、是正処置の有効性検証などの手続きを経て、規格要求事項を実現することになる。この手続きを定めたものがルールである。

1. IATF 16949認証スキームの特徴

ISO 9001をはじめとするISOのマネジメントシステム規格に関する認証スキームは、ISO/IEC 17021:2015(JIS Q 17021:2015)(適合性評価−マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項)に基づいて運営されている。IATF 16949も例外ではない。ただし、IATF 16949の場合には、ISO/IEC 17021:2015に基づいた独自の要求事項 としてIATF承認取得及び維持のためのルール第5版を定めて運営している。このルールは、ISO/IEC 17021と同様に、基本的には認証機関に対する要求事項ではあるが、自動車産業認証スキームとして定められているので、依頼者(受審組織)もそれを理解しておかなければならない。

2. 運用組織

IATF 16949の規格開発及び認証スキームの運用は、IATF及びIATF監督機関によって実施されている(図表1)

まず、ISO 9001に関係する組織はそれぞれ、規格制定:ISO/TC 176、認証スキーム:ISO/CASCO(Committee on Conformity Assessment:適合性評価委員会)及びIAF(International Accreditation Forum:国際認定機関フォーラム)である。規格とは、ISO 9001:2015であり、認証スキームとは、ISO/IEC 17021:2015及びIAF制定のMD(Mandatory Documents、基準文書)類(工数決定など)である。

それに対し、IATF 16949の場合は、規格及び認証スキームはIATFが制定している。

そして、認証スキームの運用は、ISO 9001その他多くの規格が各国の認定機関(日本ではJAB)によって監督されるのに対し、IATF 16949の場合は、IATFメンバーのいる国のIATF監督機関によって監督される。

3. 認証関連文書

IATF 16949の認証スキーム関連文書は次のとおりである。

(1)Rules for achieving and maintaining IATF recognition 5th Edition(IATF承認取得及び維持のためのルール第5版)
*英語/日本語対訳版が日本規格協会から出版されている。

(2)Rules for achieving and maintaining IATF recognition 5th Edition Sanctioned Interpretations(SIs)(IATF承認取得及び維持のためのルール第5版の公式解釈集)

(3)Rules for achieving and maintaining IATF recognition 5th Edition Frequently Asked Question(FAQ)(IATF承認取得と維持のためのルール第5版のよくある質問)

 (2)、(3)は、次のウェブサイトから閲覧可能である。
http://www.iatfglobaloversight.org/

4. 各運用組織

認証スキームの運用には、以上で述べたように、規格及び認証スキーム制定機関、認定機関、認証機関、依頼者が関わっている(図表2)

この依頼者(Client)とは認証スキームにおいて審査を受け認証される組織のことをいう。規格ではISO 9001でもIATF 16949でも“組織”(Organization)と呼ばれているが、ISO/IEC 17021:2015を始め、認証スキームの規定では、“依頼者”と呼称される。

5. 審査及び認証

IATF 16949の審査は初回審査(Initial audit)、サーベイランス審査(Surveillance audit)、再認証審査(Recertification audit)の3タイプがある。初回審査は、初めて認証を取得する際に必要な審査で、第一段階、第二段階の区分がある。第一段階はQMS構築状況審査によって、第二段階のQMS運用状況審査に移行できるか否かを判定するものである。ここでしばしば問題になるのは次の事項である。

• 遠隔地支援部門を含むプロセスの順序及び相互作用が明確ではない:
これは、何が遠隔地支援部門に該当するかの理解不足、支援機能の理解不足等が原因である場合が多い。
• 完全な1サイクル分の内部監査に一部欠落がある:
完全な1サイクル分の内部監査には、次が揃っている必要がある。
− 品質マネジメントシステム監査:設定したプロセス全て(遠隔地支援部門を含む)に対する監査
− 製造工程監査:製造工程×シフトの全ての組み合わせに対する監査
− 製品監査:全ての製品(製品群)に対する監査

以降の審査では、主として規格要求事項に抵触しているとして不適合が発行される。不適合には、メジャー、マイナーの区分があり是正処置が必要になるが、メジャー不適合の場合は加えて修正も要求され、是正処置の現地検証のための特別審査が実施される。それらを終了した上で認証書(Certificate)が発行される。現地検証が実施されないマイナー不適合に対しては、次回審査時に検証されるが、その際、是正処置が未実施又は効果が不十分で再発している場合、元のマイナー不適合がメジャー不適合となり、さらに是正処置に対するメジャー不適合が発行され、計2件のメジャー不適合が発行されるので要注意である。

本稿をもって1年間にわたる連載を終了させていただく。この連載内容が読者諸氏のお役に立てば幸甚である。(了)


菱沼雅博氏のプロフィール

菱沼 雅博(ひしぬま まさひろ)  一般財団法人日本品質保証機構 審査事業センター 品質審査部 参与
1957年生まれ。1980年東京大学工学部卒業、同年日産自動車㈱入社。設計・開発部門、品質保証部門、日本規格協会出向、タイ子会社(現Nissan Motor Thailand Co., Ltd.)出向等を経て2008年日本品質保証機構入構、現在に至る。