連載記事 飯塚悦功
第15回 日常管理(2)

4. 業務プロセスの管理

業務遂行に必要な(ユニット)プロセスとその連結関係(プロセスネットワーク)が明らかになったら、次は各プロセスで何をどのように実施するかを決める必要があります。

このためには、以下のことを明らかにする必要があります。

a) プロセス設計:プロセスの“技術的”仕様
b) プロセス管理計画:プロセスの技術的仕様を実現するプロセス管理計画
c) 業務標準(作業標準):プロセス管理計画を構成するプロセス(業務、作業、タスク)の実施方法の指定
d) プロセスの維持
e) プロセスの改善
f) 多様な管理対象の管理
手段的管理:作業の管理、要員管理、設備管理、計測器管理など
目的的管理:QCDSE(品質、コスト、納期、安全、環境管理)の管理

これらのうち、a)、b)については、連載第9回で触れています。そこで、まずは、a)、b)について、簡単に復習することから始めます。

4.1 プロセス設計

プロセス設計、すなわち、業務目的を達成する手段・方法についての技術的仕様として、例えば、製造では以下のような事項を指定します。

• 使用する原材料、部品、ユニット(の仕様)
• 製造方法(工法)が満たすべき操業条件(設備条件、従事者の必要技能など)
• なすべき作業・業務の方法
• 検査・監視の方法・基準
• 作業、業務、検査実施の環境条件

通常は「標準工程設計」の修整、すなわち、製造技術標準としての「標準工順」、重要な単位工程に関する「工法標準」、複数の工法がある場合には「工法比較表」、工法によっては「設備構造標準」などを整理・蓄積しておき、これをもとに設計をします。

工程設計にあたり、「工程解析」、すなわち「工程において作り込むべき品質特性とそれに影響を与える要因との間の関係」を把握し、工程の条件を定めます。これはQC工程表(工程管理計画)の根拠となるものです。

いわゆる事務作業(知的業務)では、上述の製造の場合の工程設計に対応するプロセス設計はどのようなものとなるでしょうか。いろいろ考えられますが、以下のような事項を明らかにする必要がありそうです。

• インプットされるモノ、情報、状態(の仕様)
• インプットからアウトプットを得るために必要なプロセス条件(参照情報、変換〈計算など〉方法、従事者の能力など)
• 実施すべき作業・業務の方法・手順
• 確認・監視の方法・基準

ここで技術的仕様と言っているのは、(「プロセス管理計画」で具体的に指定するように)実現方法はいろいろあるでしょうが、業務目的を達成するために満たしていなければならない条件という意味です。例えば、ある表を作成するためには、どの情報をインプットとして、どの情報を参照し、どの基準に適合するように、どのような最適化を図らなければならないかを指定するものです。ここでも製造工程での「工程解析」に相当する分析が必要となります。何が満たされなければ目的を達成できないかを明らかにしておかなければ、業務の管理はできませんし、改善もできないでしょう。賢い方は、これを可視化せずにできてしまうものですから、いつまでたっても優れた業務実施法が伝承されません。

4.2 プロセス管理計画

プロセス設計で明らかにしたプロセス技術仕様を満たすように、どのようにプロセスを管理するか、その管理計画を作成します。

以下のような事項を考慮します。

• 各プロセスで作り込むべき品質: 各プロセスにおいて作り込むべき品質特性を明確にする。この品質特性と最終製品特性との間の関係を明確にする。
• 各プロセスにおける管理規準: 各プロセスで作り込むべき品質特性に影響を及ぼす要因を明確にし、それらについての管理規準を定める。管理規準は要求品質を満たすように、その管理幅を明確に定める。要因による管理が、技術的あるいは経済的に困難な場合には、結果として得られる品質特性について管理規準を定める。
• プロセスの区切りにおける品質確認:単位となるプロセスが多い場合には、プロセスの途中にいくつかの区切りを設け、品質の達成状況の確認を行う。
• 確認: プロセスの最終確認、中間での確認などの確認方法を定める。

上述したプロセス管理計画について、製造、とくに組立製品の製造における工程管理計画として、わが国で開発されたツールが「QC工程表」です。

これは、材料・部品の受け入れから完成品の出荷にいたる工程全体、あるいはその重要な一部の工程について、工程設計に基づいて、各工程で確保すべき品質特性とその管理方法を明らかした管理表です。この管理表は、製造工程全体を通じて品質管理活動の整合性を検討するときや、製造工程の監査に役立っていました。

QC工程表に記述すべき事項としては以下のものが挙げられます。

• 管理項目:各単位工程が正常かどうかを判断するための項目(作り込むべき品質特性、それらの品質特性に影響を与える要因、工程の状態を表す特性値などを考慮して決定する)
• 管理水準:目標値、限界値
• 標準類:準拠する作業標準、設備・治工具標準など
• 管理手段:管理に用いるツールと頻度(管理図、チェックシート、チェックリスト等)
• 異常処置:異常報告の基準
• 担当者:管理担当者、報告先

作成にあたって注意すべきことは、妥当な管理項目を選定し、適切な管理水準を設定することです。そのためには、最終製品の品質特性と各工程での品質特性との間、および各工程で作り込むべき品質特性と工程の要因との間の定量的関係を正しく把握することが重要です。その意味で、よいQC工程表は充実した工程解析があってはじめて作成できると言えます。

QC工程表は、一連のプロセスで品質が作り込まれ確認される組立工程の管理のために考案されました。しかしながら、一連のプロセスをいくつかの単位プロセスの連結とモデル化し、各単位プロセスにおいて作り込むべき品質特性とその管理方法を定めるという考え方は、製造に限らずあらゆる業務プロセスの管理にも適用可能です。いわゆる事務・販売・サービスなどの業務プロセスについて、QC工程表を作成することによってプロセスを定義し、管理し、改善する活動は、1970年代から試みられていました。

この考え方を「知的業務のプロセス管理」に適用したらどのようなことになるかについて、連載第10回で詳細に説明しています。ご興味あれば、バックナンバーをご参照下さい。

5. 業務マニュアル

業務の管理において、その業務をプロセスと捉えることの意味や意義を考察してきました。ユニットプロセスの管理のためには、目的を達成するために(アウトプット)、何を受け取り(インプット)、どのような資源・インフラを使い(リソース)、どのような活動をするか(活動)、またその間どのような状況把握や介入をするか(測定・管理)を明らかにする必要があります。良い仕事をするためには、ユニットプロセスの要素となっている活動をどのように実施するか、その良い方法を規定しておくことが重要です。ここでは、何をどのように規定し、どう活用すべきか、つまりは「業務マニュアル」について考えてみたいと思います。

ここでいう業務マニュアルの対象となる要素は、ユニットプロセスの構成要素のいずれでもありえますが、重要なのは「活動」+「測定・管理」と「リソース」に関わるマニュアルでしょう。活動+測定・管理が重要であることはご理解いただけると思います。「リソース」に関わるマニュアルとは、そのプロセスの活動を支え、また投入される経営資源、例えば、技術・知識、人材、設備・機器、作業・業務環境、ユーティリティ(電気、ガス、水など)の「維持」の仕方についてのマニュアルです。

5.1 ものづくり現場の作業標準

作業・業務マニュアルについて考察するにあたって、まず始めに、ものづくりの現場で作業標準がどのように運用されてきたかを概観してみることにします。効果的・効率的に要求を満たすために必要な作業・業務の方法は、作業標準、業務標準、業務手順、業務マニュアルなどとして文書化されるのが普通です。

製造作業標準に記述する内容は多種多様ですが、おおよそ以下のようなものが含まれています。

a) 作業の目的
b) 作業の対象物、使用材料・部品
c) 作業の手順・方法
d) 作業従事者、必要な資格・能力
e) 使用する設備、金型・治工具、補助材料
f) 作業の時期・場所
g) 品質基準、その計測方法
h) 品質、安全上で注意すべき事項
i) 異常処置の方法

製造においては、作業標準を2つのタイプに分けて運用するのが普通です。例えば、製品Aの最終組立ラインのある工程の作業標準であるとすると、どこにどの部品をビスで留め、どの部品をどこに半田付けし、どう配線するかを指示するような標準と、ビス留め、半田付け、結線、○○性能測定などの要素作業の手順、方法を規定する標準です。前者は、配線や組立手順など製品ごとに定められる標準、および設備・試験機器の操作方法など装置ごとに定められる標準です。後者は、製品が変わっても、共通的に行われる要素作業に関する標準です。ある製品を正しく作るために、要素作業標準で規定される方法に従って、その製品を成立させるために必要な要素作業を過不足なく行うという考え方に従うものです。

作業標準は、実施すべき作業・業務についての分析(作業・業務内容とその結果の間の関係の解析・理解)と最適化(望ましい結果を得るために必要な作業・業務の内容)の最終成果であり、要求品質を効率的に実現するための作業およびその手順を文書化したものと位置づけられます。その意味で、作業標準は、製造作業、サービス提供行為に関して「良いと分かっているモノや方法」です。

5.2 知的作業の業務マニュアル

読者諸賢は、上記のものづくり現場の作業標準についての説明を一読しただけで、知的業務の業務マニュアルが備えるべき一般的要件を理解するに違いないと思います。とは言っても、実は、具体的に作成し、それを使って教育訓練し、仕事のできる人間に仕立て上げるのは容易ではありません。でも、少なくとも、何をすればよいか皆目見当がつかないという状態からは脱したいと思います。

知的作業の標準の内容を、上述の製造作業標準の記述内容から類推するに、以下のように多少の読み替え、解釈をすればよいと思われます。

a) 業務の目的
b) 業務の対象(画面テンプレート,ワークシートなど)、入力・参照情報
c) 業務の手順・方法(インプットからアウトプットを得る手順・方法)
d) 業務従事者、必要な資格・能力
e) 使用する機器(PC、OA機器など)、知識基盤
f) 業務の実施タイミング、場所、環境
g) 成果物の基準、評価・判断方法
h) 留意事項、ノウハウ
i) 異常処置の方法

このなかでとくに留意すべきは、c)、e)、g)、h)、i)などでしょうか。c)の手順・方法は、インプットから無理なくアウトプットを得ることができるようなものでなければ手順・方法としての意味がありません。手順を書くのは簡単ですが、「この手順・方法で、本当にインプットから期待されるアウトプットを導出することができるだろうか」と自問してみることが必要です。そのときたぶん、e)に記載されている「知識基盤」として何が必要か気になるに違いありません。g)は、期待するアウトプットが得られたかどうかの判断基準が明確であるかどうかを問題にしています。h)は、その知的作業をするうえでの、コツ、ノウハウ、留意すべき事項などです。i)は、何か問題があったときの対応方法ですが、あらかじめどのような問題が起こり得るか、ある程度分かっていなければ、有効な記述はできません。

5.3 作業・業務標準の有効性の維持

作業標準、業務標準は、遵守されなければ意味がありませんし、同時にその有効性についても常に見直しが行われ、必要に応じて改訂されなければなりません。標準化はベストプラクティス共有の経営ツールといえますが、真にそうであるためには、必要に応じて見直し改訂しなければなりません。これを継続的に実施するために、標準を維持・管理する機能を品質マネジメントシステムの一機能として装備する必要があります。問題が発生し、標準に問題があることが明らかになったら、標準を改訂し、その内容を然るべき部門・人に伝達し、それに従って作業・業務が実施されていることを確認する仕組みが必要です。

通常、新しい作業・業務標準は技術者・管理者によって起草されます。しかし、作成しただけで作業・業務の質と効率が保証されるわけではありません。関連する管理者、監督者、作業・業務従事者がその内容を理解しなければ何の意味もありません。必要なら教育・訓練を行わなければなりません。

作業・業務の教育・訓練においては、単にその内容だけでなく、結果が後工程に及ぼす影響、完成品の品質や最終的な仕事の結果に与える影響についても理解を得ることが大切です。作業・業務にあたって、作業・業務に従事する人には以下のことが望まれます。

• 作り込むべき品質を十分に理解していること
• その方法で実施しなければならない理由を理解していること
• 品質の達成状況を確認することができること
• 要求に適合しない場合は、工程、作業を調整できること
• 品質達成のための動機づけがなされていること

 このため、作業・業務標準の教育・訓練においては以下の考慮が必要となります。

• 現場で現物を用いて教え、実際に作業させてみる
• 標準を守らないとどんな結果になるのかを教える
• 標準の行間ににじみ出る作業・業務ノウハウを教える

さて、作業・業務標準はどのくらい詳細に書けばよいのでしょうか。これは古くから議論されてきた話題です。作業・業務標準は、目的を達成するための手段を規定するものです。目的を示されただけでどうすればよいか分かるなら、その実現手段を事細かに指定する必要はありません。どうすればよいか簡単には分からないというのなら詳細に規定する必要があります。記述の詳細さについての判断基準はここにあります。

それでは、目的達成の手段が分かるかどうかは何で決まるのでしょうか。一つは、その作業・業務の特徴、性質による難しさです。その作業・業務遂行に関わる技術の成熟度に依存するということです。もう一つは、その作業・業務に従事する人の能力(知識、技能)です。適度な詳細さの作業・業務標準を作成するためには、想定する実施者のレベル、あるいは前提としている教育・訓練の内容を明確にしておく必要があります。

「よぉーく考えて一生懸命やってほしい」とか「例のあの件よろしく頼む」で、すべて分かって完全な仕事をしてくれる人と、それなりの手順・方法を教えてもその通りにできない人がいることを認識すべきです。作業・業務の実施者の実施能力をあるレベルに想定し、そのレベルまで上げてから作業・業務に従事させると考えない限り、合理的な詳細さの標準は作成できません。

6 . プロセスの維持

6.1 管理状態

生産・サービス提供において重要なことは、安定した生産・サービス提供、すなわち生産・サービスのプロセスの「管理状態」の維持です。その基本は、標準に従って作業・業務を実施し、もし目標通りの結果が得られなかったら、状況に応じて適切な処置をとることです。管理状態の維持の基礎となるのは、標準に定められた方法を忠実に守って業務を実施し、その結果を確実にチェックし、問題があれば修正することです。このことは、まさに「言うは易しく行うは難し」です。その成否は、良い結果が得られるような技術的根拠のある標準・手順類の制定と、作業・業務を行う人に対する教育・訓練の質にかかっています。

「管理状態」とは、標準で規定した通りの作業・業務を行い、標準によって規制することで防ごうとしている外乱となるバラツキ要因が管理され、あっても仕方がないと考えている要因によるバラツキだけでプロセスが変動している状態です。標準を定めて、作業・業務を規制するとは、許されないバラツキを防ぎ、入り込んでもよいと諦めているバラツキだけにすることです。何もかもきちんとして、バラツキをゼロにしようと考えている訳ではありません。バラツキには、許されるものと許せないものがあると考えています。

この「許容できるバラツキと許容できない(してはいけない)バラツキ」に関して、製造プロセスにおいて「工程能力」という概念があります。工程能力とは、標準遵守状態でのバラツキ、管理状態でのバラツキ、安定した予測可能な工程がもつ固有のバラツキというような意味です。1960年ごろ日本の先進的な製造業は、「品質は工程で作り込め」と言って、検査ばかりに頼ることなく製造工程で品質を作り込むことこそ、効果的・効率的な品質管理方法であるとして頑張っていました。

いまではあまり使われていませんが、「管理図」という手法があって、工程の管理状態を把握する適切な指標を選び、その時系列データをプロットして工程の状態を把握し、工程を管理状態に保つような管理を行っていました。そのデータ処理法より「工程を管理する」という概念の深遠さを学ぶべきで、その思想は現代の様々なプロセスの管理に適用可能です。その基本思想は、バラツキには避けられない(=許される)バラツキと避けられる(=許されない)バラツキがあり、それぞれ偶然原因および異常原因によって引き起こされると考え、工程の変動を、偶然原因による避けられないバラツキのみによるものだけにしようとします。

この最大の武器が「標準化」で、標準を遵守していれば、避けられるバラツキは抑え込めるはずだと考えます。何か異常があったら、それは標準を遵守していないか、分かっていなかった異常原因があったものと考え、改めて標準を遵守できるように種々工夫をするか、標準を改訂してその種の異常原因によるバラツキの再発を防止しようとします。

この意味では、「許されるバラツキ」、「避けられないバラツキ」というのは、良い意味での「アキラメ」です。ここで「アキラメ」とは「“あるがまま”を受け入れる:accept as is」という意味です。「アキラメと努力」です。なすべきことをすることによって達成できるレベルを受け入れて、そのなすべきことを続け、さらに失敗など教訓を得る機会があればレベルアップするという努力を続けるという意味です。

バラツキ、失敗をゼロにすることは不可能です。ある一定レベルより小さく/少なくなるように標準を定め、偶然原因による許されるバラツキを受け入れてしまう、これが非現実的な完璧主義を脱却した合理的な管理スタイルというものでしょう。許されるバラツキとは合理的なアキラメの結果なんです。

6.2 工程能力

工程能力(process capability)とは、この偶然原因によるバラツキです。工程の状態を把握する指標として製品の特性値を使っているとき、このバラツキと製品の規格幅との比較を「工程能力指数」と呼び、Cpなどと表記します。規格幅が管理状態でのバラツキの±3シグマ範囲になっているときCp=1.0としています。理想的にはCp=1.33以上、すなわち規格幅が管理状態でのバラツキの±4シグマになっているときだ、などと言っていました。バラツキの中心が規格の中央にあり、特性値が正規分布であると仮定できれば、不良率は、±3シグマで約0.3%、±4シグマで10万分の6程度(60ppm)となります。日本の品質管理の成功を見て品質反攻戦略を展開したアメリカの「シックスシグマ」という概念は、「規格幅が±6シグマであれば、特性値の平均が1.5シグマずれていても、片側で4.5シグマ外の確率、すなわち100万分の3.4に抑えられる。これ(事実上のZero defectと言えます)を目指した管理を展開しよう」というものです。

製品特性値が計量値でなく、良/不良で判断される場合にも、「工程能力」を不良率で判断してよいと思います。技術的にどれほど成熟していて標準遵守によってどれほどのパフォーマンスを期待できるか、ヒューマンエラーなどヒューマンファクターを考慮するとき、どれほどの不具合が生じるか、世間相場がどのくらいのレベルであるか分からないと的確な判断は難しいのですが、少なくとも自職場での進化は把握できるはずです。私のこれまでの経験では、ppmオーダー、すなわち100万回に数回の失敗に抑えるというあたりが限界と感じています。あとはどの程度の不良率レベルであれば、「許される」レベルであるかという判断・見識にかかっていると思います。

交通事故では、日本では24時間以内死亡が17,000人に達しそうだった時代(1970年)から、減少を続け昨年は3,500人余というレベルになっています。日本の人口は1億3,000万弱ですから、「万一」より低く、1万分の0.3程度(30ppm)なんですね。航空機の死亡事故に遭遇する確率はそのまた150分の1程度で、機種によって異なりますが、ざっくり平均してしまえば500万フライトに1回(0.2ppm)程度です。新鋭機は最近まで無事故で、それよりさらに「安心」だったはずなのですが、2機の737MAXが墜落し、航空機の開発プロセスの大改善が望まれます。この事故はショックです。たぶん制御ソフトの「基本思想」に問題があったのだと思います。類似の事故は、エアバスA300でありました。航空機の制御システムと人間系の「せめぎあい」に、システム側が我を通すような設計になっていたことが原因でした。

話がそれてきました。もとに戻さねばなりません。要するに、何ごとであれ、「その分野で利用可能な技術を使い、標準化して、それなりの努力をして遵守することによって、避けられるバラツキ、許されないバラツキを抑制したときのバラツキ」という概念が「工程能力」というものです。これを日常的に実現できるようになっているとき、その工程、プロセスが「管理状態」にあると言います。

プロセスの目的、世間相場に照らして、工程能力が不足していると判断されたら、

• バラツキの原因を調査し、工程の改善をはかる
• 品質規格の見直しを行い、厳しすぎる場合には、その幅を拡大する
• 全数選別工程を設ける

などの対応をします。

検査とかチェックとかいう行為は、工程能力が十分であって、しかも管理状態から逸脱する可能性が低いときには、あまり効率的な方法ではないということになります。もっとも適正であることを公式に保証するという性格の確認もありますので、品質が工程で作り込まれているから検査、確認、チェックは必要ないとは言えませんので注意が必要です。

6.3 処置

さて、上述したように、標準が不完全であると、思わぬ大きなバラツキが発生します。標準通りに実施しないと、想定していなかったバラツキが発生します。こうしたプロセス変動があるかどうかを、適切に定めた管理指標の値や何らかの確認行為によって判断します。

もし、通常と違うということが分かったら、まず応急処置を行い影響が拡大することを防止します。さらに異常の原因を追究して、その原因を除去する対策をとります。この活動が確実に行われれば、そのプロセスは速やかに安定したものとなるでしょう。安定した「予測可能な」プロセスを作り上げること、これがプロセス管理のねらいなのです。

プロセスの異常を検出したら、異常原因を追究し、応急処置を実施し、関連部署に連絡し、再発防止策を実施するなどの活動を、生産・サービス提供の現場の作業者、監督者、管理者がそれぞれの責任と権限において確実に実施しなければなりません。このような管理活動を組織的に実施するための管理ツールとして、生産現場などでは「工程異常報告書」が使われます。そのねらいは、

• 工程の異常発生を記録し、報告し、伝達する
• 原因追究、対策についての進捗を管理する
• 原因および対策の内容を記録する
• 製造管理、サービス提供プロセスに関する技術を蓄積し、将来に生かす

などです。

 工程異常報告書の書式も様々ですが、以下のようなことを記述するのが普通です。

• 異常現象の記述
• 生産・サービス提供の現場による原因の解析の内容、応急処置の内容
• 根本原因追究の担当部署、分析の内容
• 再発防止策、対策の効果の確認
• 恒久処置の内容、その実施計画、恒久処置の進捗記録

こうして、発生した異常を速やかに除去し、同時に組織として“賢くなる”活動を展開します。

問題

[1] あなたの担当業務について、プロセス管理計画を策定してみて下さい。

[2] あなたの担当業務についての業務標準をレビューし、改善すべき点を挙げてみて下さい。

[3] あなたの担当業務が「管理状態」にあるかどうか判断して下さい。そう判断した理由は何ですか。

[4] あなたの担当業務について、「管理外れ」の際の処理手順がどうなっているか確認して下さい。改善の余地があるならそれを列挙して下さい。