連載記事 飯塚悦功
第17回 日常管理(4)

8. プロセスの改善

8.1 改善活動

日常管理の基本は、PDCAサイクルを回すことによって、業務分掌として規定されている、各部門・各人の担当業務の目的を達成することにあります。PDCAサイクルのなかで、C(Check:確認)とA(Act:処置)は、業務の目的を達成するための修正、やり直し、応急対応などが基本になりますが、同時にその原因を分析してP(Plan:計画)にフィードバックすることも行います。すなわち、目的が不明確、不適切であればそれを直しますし、目的を達成するための手段、手順、プロセスに問題があれば改善します。このことによって、この業務遂行プロセスのレベル、すなわち「管理のレベル」が向上します。

日常管理には、ルーチンワークを正々粛々とこなすばかりでなく、ルーチンワークを実施する「方法」を改善することも含まれているということです。プロセスの管理において最も重要なことは、プロセスの維持であることは間違いないのですが、それだけでは不十分だと認識しているのです。どんなときでも、技術やマネジメントシステムは完全ということはありえず、計画した通りに実施すれば満足できる製品・サービスを生み出せるプロセスを最初から構築することは、ほとんど不可能だからです。不満足な状況が発生したら、これを確実に解消することを継続することが重要です。一件ずつの改善は小さいかもしれませんが、まさに「継続は力」、この努力を積み重ねることによって大きな進歩を遂げることができます。

こうした改善は関係者全員の参画で行うべきです。問題の真の姿は当事者が一番よく知っているからです。とくに、現場第一線の方々による問題意識・改善意識を持つことの重要さを理解し、問題解決の方法論と手法を習得してもらったうえで、日常の維持管理活動の中で改善を行える組織運営を行うことの意義は計り知れません。第一線の方々にも大いなる創造性が要求されることになります。言われたことだけを忠実に行うという枠を越えて、自主性、主体性、積極性が醸成されることでしょう。

この結果として、自分(たち)の仕事と提供する製品・サービスの質との間の関係が理解できるようになります。職場の中での自分の仕事の位置づけを理解できるようになります。生産やサービス提供に用いる機器、設備、道具、情報システムなどの動作原理、構造、論理などが分かるようになります。そして、自分たち自身で主体性をもって問題解決を行うような組織ができあがります。

改善を行う手順は、おおよそ以下の通りとなるでしょう。

① テーマ選定
② 改善目標の設定
③ 組織作り
④ 実情調査
⑤ 原因解析
⑥ 対策案の検討
⑦ 対策の試行
⑧ 標準の改訂

8.2 システムの改善

プロセスの改善を進めていくと、当然のことながら、それらプロセスの集合体としての品質マネジメントシステムの改善、ときに革新に発展します。例えば、複数のプロセスに関係する問題、複数のプロセスに共通の基本的問題、そもそも複数のプロセスで多様な望ましくない現象が現れる遠因・誘因となっているシステムの構造的な問題などがあるからです。

こうした問題に遭遇したときに、これに組織的に取り組める体制を構築しておく必要があります。例えば、品質マネジメントシステム全体に関わる問題を検出するためのシステム要素である、内部監査、マネジメントレビュー、組織的改善・改革を進めるための管理体制として方針管理(次回から説明します)などのプロセスを充実させることによって、システム改善が進みます。

この連載では、「方針管理」のあとに「問題解決」を取り上げますが、そのとき「マネジメントシステムの脆弱性分析」についても考察する予定です。それは、発生した個別の問題そのものの解決の重要性を認識しつつ、これらの問題を引き起こす可能性のあるマネジメントシステムの不備や弱点を特定し改善するための分析です。そのため、改善対象となるマネジメントシステムの理解の仕方や、優れたマネジメントからの乖離をどうとらえるかに焦点を当てます。しばらくお待ちください。

8.3 組織的改善活動

改善においては、問題解決の「技術的方法」に関わる側面に加え、組織的に進める工夫が必要です。次回から取り上げる「方針管理」は、その一つのかなり大々的なものであり、単なる組織的改善というよりは、事業の持続的成功を強く意識した戦略的な活動です。

そこまでの大々的なものでないにしても、問題解決の方法、ステップ、適用手法に焦点を当て、いわゆる“高度な”問題解決を目指すよりは、日常管理の一環として、自然体で改善が進められていくような体制を指向する方が得策と思います。

その際、次のようなことに留意するのが普通です。

• 問題意識・改善意識の醸成: 環境認識、ビジョン、前向き・積極性
• 課題認識の方法論の会得: あるべき姿と現状のギャップの認識、課題の明確化
• 課題の共有: 内部コミュニケーション、部門横断活動
• 見える化: 課題の登録、報告、表彰、業務システムへの反映(標準化)
• 相互啓発: システム化・標準化、切磋琢磨、組織内大会など

これらはいずれも、「改善」の技術的方法論というよりは、改善活動が重要で優先されるべきものであり、組織構成員の積極的参画を促す「運動論」としての意味合いの強いものです。

8.4 小集団活動:QCサークル

日常管理の最後に、産業界において進められてきた2つの「組織的改善運動」をご紹介しておきます。

その第一は「QCサークル」です。これは、全員参加の改善を進める興味深い仕組みです。QCサークルとは、同じ職場内で品質管理活動を自主的に行う小グループのことで、1962年に始まったとされています。この年にQCサークルの全国組織ができたからですが、実際には、それ以前から、職場の仲間が集まって自主的に品質管理の勉強をし、改善を進める運営が行われている職場もありました。その代表は1950年代の鉄鋼業におけるJK活動(J:自主、K:管理)で、これがQCサークルの原型と言えます。いまでは、自主的な活動でも、業務の一環として行う活動でも、小集団で行う改善活動をQCサークル活動と呼んでいるようです。

QCサークルには、「QCサークル綱領」とか「QCサークルの基本」などのバイブル的指針があり、「QCサークルと名乗るからには……」などという石頭のオジサンもいますので、型にはめずに運営するために、「小集団活動」というような一般的な呼び方をしている場合もあります。呼び名はどうでもよく、全組織的な品質マネジメントの一環として、全員参加で、自己啓発、相互啓発を行い、QC手法を活用して職場の管理、改善を継続的に行うという仕組みの存在が重要です。このような活動によって、職場での問題解決に成果を上げるとともに、人々の能力開発・向上、品質マネジメントの考え方や手法の普及に貢献できます。

QCサークル活動が品質管理における日本発の画期的組織運営方法であったために、QCサークル活動そのものがTQM(総合的品質管理)である、あるいは「TQM=方針管理+QCサークル活動」という誤解が広まったこともあります。現に、そのように理解してTQMを導入したと称していた組織もいくつかあります。TQMが幅広いことは、この連載でも延々と説明してきました。QCサークルしかやっていないのにTQMと名乗ったらけしからんということはなく、ただQCサークルを効果的に運用するためには、日常管理、方針管理、組織的改善活動、問題解決法の習得、運営推進組織の設置、管理者の理解・指導・支援などにまで視野を広げることが重要と認識する必要があります。

元祖QCサークルは同じ職場の人々の自主的改善活動と位置付けられていましたが、仕事の仕方の変化に応じて柔軟に考え、必ずしも同じ職場内でチームを作ることにこだわる必要はないと思います。QCサークルのねらいは、改善効果の大きさにあるのではなく、むしろ組織運営における全員参加の風土作り、改善手法や考え方の習得など、職員の意識改革と教育を主眼に置くことが大切だと思います。その意味で、管理者層が改善手法や考え方の教育、チームの構成、テーマの決定、活動のスケジュールなどについて適切なアドバイスを行い、積極的に関与することが望まれます。

QCサークルで取りあげるテーマは限定されているわけではありません。コスト削減でもよいし、ミスを減らす、効率を上げるなどの業務の質的向上を図るといった質の問題でもよいと思います。テーマは画一的に決められているものではないし、用いる手法や成果の発表方法に決められた形式があるわけでもありません。管理者は、それぞれのテーマに応じて適切な方法を用いることを指導していくべきです。いろいろな改善事例を学ぶことで手法や進め方の教育の機会となりますし、優秀なチームの表彰でサークル活動の活性化にもつながります。

8.4 5S

第二の例として「5S」という不思議な組織的改善運動を取り上げます。表面的に見ると「そんな小さなつまらないことを大のオトナが……」と思えるのですが、なかなかどうして強力な経営改善ツールです。基本動作の徹底、業務実施の基盤づくり、職場の観察眼の強化、全組織一丸の体制など計り知れない効果があります。深遠ではありますが、やることはその気になれば誰でもできることですから、品質や安全への取り組みへのキックオフ活動と位置づけて導入することもあります。

5Sとは、整理(Seiri; Sort)、整頓(Seiton; Set)、清掃(Seiso; Shine)、清潔(Seiketsu; Standardize)、躾(Shitsuke; Sustain)の頭文字の5つのSことです。海外でも普及していて、英語でもSで始まる該当語にする工夫が必要で、カッコ内の用語をあてているようです。整理、整頓、清掃までは良いとして、清潔、躾は首をひねりますが、5S全体の本質が伝わればよいのではないでしょうか。

5Sは、ただ単に職場をきれいにするというような表層的な目的のために行うのではなく、この活動を通じて標準化、標準の遵守、3現主義(現場・現物・現実)、「目で見る管理」などを教育し、現場での問題発見能力、解決能力の向上をねらいとして行われる人材育成プログラム、業務システム基盤整備プログラムです。

(1) 整理

整理とは、必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くことです。いるもの、いらないものに分けるためにはその判断基準が必要であり、それが標準です。現場の作業方法では必要と認められていても、その場所にそれだけの量が必要か、改善の余地はないかを検討し、よりよい方法が見つかればそれを新たに標準として定めていきます。

(2) 整頓

整頓は、必要なものを決められた場所に決められた量だけ、いつでも使える状態に容易に取り出せるようにしておくことです。探す無駄をなくすことが目的です。

(3) 清掃

清掃は、隅々まできれいに清掃し、問題点が分かるようにすることです。目的は、きれいな職場で気持ちよく働けるようにするという環境作りと、隅々まで目を光らせることにより問題を発見することです。

(4) 清潔

清潔は、汚れを取り除いておき、発生した問題がすぐ分かるようにしておくことです。清潔は清掃を行うことで達成されるわけです。清掃は隅々まで観察して点検することに力点が置かれており、清潔はその結果としてきれいになっていることを強調しています。

(5) 躾

躾は、決めたことを必ず守るように指導することです。また、問題が問題であると分かり、自主的に解決できるように指導、訓練することです。これには、挨拶、言葉づかい、話し方や服装を整えるなどの人としての礼儀作法とともに、標準作業を守る、モノを決められた位置に置く、機器の取扱いを決められた方法で行うなど仕事の実施方法の教育も含んでいます。

5Sとは要するに、職場での仕事に必要なものだけが置かれているか、必要なものがいつも同じ場所に置かれているか、必要なものがきれいな状態になっているか、いつ見てもその状態が保たれているか、その状態が保たれるように標準化・手順化されているか、という問いに答えられるようにする活動です。これらが質、効率、安全の確保の基本になっていることはご理解いただけると思います。例えば、作業ミスの防止に効果があり、また設備、器具などの故障の早期発見やメンテナンスの促進にもつながります。さらに、5Sは一人でも実行しない人がいれば実現できませんので全員参加を促しますが、これによって参画意識が高まり、全員の協力のもとに目標を実現するといった意識の高揚にも有効です。

知的業務に従事する人々にとっても職場環境を整えることは重要です。ただ職場をきれいにするだけでなく、標準化、点検による問題発見、整然とした状態にすることによるミス防止などの効果をねらって取り組んでみたいものです。(でも、私は、失格です……)

9. 機能別管理(経営要素管理)

9.1 ヨコの静的管理

「機能別管理」とは、品質、コスト、納期、安全、環境などの機能(管理目的、すなわち経営要素)を軸とした部門をまたがるプロセスがあると考えて、このプロセスを全社的(または全事業部的)な立場から管理しようとするものです。

「機能別」と呼ばれていますが「経営要素」の方がよいと思います。英語で“functional organization”といえば、製品系列や事業分野によらず、設計とか製造という「機能」を軸に構成した組織構造を言います。ですから機能別管理の訳として“cross-functional management”(機能/部門横断管理)と言わなければ意味が通じません。組織構造について“function”は「部門」と訳すべきであり、一方で“function”と「機能」を反射的に結びつけてしまう日本において機能別管理という呼称はいかにも具合が悪いからです。

「経営要素管理」は、各部門における日常管理を前提として、組織目的を達成するために、部門を超えて組織全体としての品質、コスト、納期などを部門横断的に管理するものです。通常は、委員会などを組織して、この場で全組織的視点からの課題を明確にし、経営要素ごとに実施計画を立案し、実施担当部門の日常管理を通して実施し、実施結果を全社的立場から評価し、必要なアクションをとります。経営要素管理の成否は、全社的視点と部門間の壁の打破にあります。

前節まで説明してきた「日常管理」は、組織構造に応じたタテの静的管理という位置づけです。ここでは、ヨコの静的管理としての「経営要素管理」について簡単に触れておきます。そして来月からは、動的管理、環境変化への適応のための全組織一丸管理と性格付けできる「方針管理」について考察します。

9.2 ことはじめ

日本の品質管理の歴史のなかで、部門横断的な管理を大々的に取り上げたのはトヨタ自動車であると教わりました。1960年代半ばとのことです。このときは、部門横断の管理目的として「品質」と「利益」の2つを取り上げたそうです。この横串管理によって大きな変化があったのは、取締役部長の思考・行動様式だったそうです。

役員層の構成が、現在のような、経営責任を担う取締役と、執行責任を持つ執行役員という2つの階層で構成することが常識的になるよりずっと前のことです。優秀な部長が取締役に取り立てられて取締役部長となり、その次は常務、専務、副社長、そしてゆくゆくは社長、なんてことを考えるかもしれないその最初のステップです。

その取締役部長が「役員らしくなった」というのです。部門横断管理を強く意識して経営する前は、取締役部長は担当部門の利益代表に過ぎなかったのですが、きちんとした部門横断管理を導入してからは、まずは全社の経営のことを考えるようになったというのです。

上述しましたように、部門横断管理は、委員会や会議体を利用して運営されるのが普通です。トヨタでは、上述したように、品質と利益の2つの管理から適用しました。「品質」については、この連載で「品質保証」について考察したような全組織的活動について検討するのだろうと見当がつくものの、「利益」となると面喰らいます。まさに経営そのもの全般にわたりそうです。なぜなら、利益の確保・増加のためには、売上を増やし、効果的・効率的組織運営によるコスト低減、生産性向上が主題となるからです。なるほど、こういうことを日常的に考えさせられ、迅速・的確に対応行動をとるよう担当部門の指揮をするのですから、防御的な利益代表でいられるわけがありません。

9.3 経営要素管理の運営

経営要素管理のための委員会・会議体の典型は、各部門の業務分掌をまたがる機能や課題・問題について組織横断的に検討し、適切な処置をとるように、例えば、品質(Q)、コスト(C)、量・納期(D)、安全(S)、環境(E)、モラール(M)などの経営要素を組織的に運営管理するためのマネジメントシステム要素です。

これら部門横断的機能の管理のために委員会・会議体を使うときには、これらの機能を円滑に進め、マネジメントシステム全体としての効果を効率的に上げるために、管轄、監視、調整、支援、促進などのために管理部門を置くこともあります。例えば、品質や安全は、組織を構成する各部門で実現しますが、その実現を支援し調整し、全体を監視し管轄するために、品質保証部門、安全管理部門などを置くことがあります。これは単なる事務局ではなく、組織全体としての課題の認識、それに基づく経営企画、部門間調整、委員会・会議体の切り回しなどの能力を要求される重要な部門です。品質保証部門については、連載第4回で検討しました。

こうした部門を設置するには、人件費を中心とするコストが必要となりますので、投資効果を検討しなければなりませんが、一般的にみて組織全体として重要な機能であり、部門をまたがる調整・統合や現業部門の支援が必要で、また組織全体としてのこれらの経営目的の企画・運営が重要である場合には、これを主管する部門を設けるべきです。産業界で品質保証や品質管理の部門のない企業は考えにくいですが、私がこの20年ほど関わってきた医療では、大病院でも委員会や会議体は多数あるものの、専任者を設け部門を設置しているところはまだ少数派です。いや、産業界においてさえ、工場に品質管理部門はあっても、本社や全社レベルにはなく、委員会や会議で対応しているところもあります。

 間接部門に多数の人が居て、何をしているのか分からないのも気持ち悪いものですが、何でもかんでも委員会や会議でこなしていて、いつも同じメンバーというのもいかがなものかと思います。

問題

[1] あなたの部門における業務改善活動がどのように進められているかレビューしてみて下さい。問題・課題が特定され、適時適切に改善されていますか。

[2] あなたの部門が関与すべき経営要素管理(機能別管理)がどのように運営されているかレビューしてみて下さい。