連載記事 飯塚悦功
第19回 方針管理(2)

5. 実施計画

5.1 方策の詳細実施計画

各部門・各階層に展開された方針・方策は、担当部門において、目標達成のための「実施計画」へと徹底的に展開します。いつ、誰が、何を、どこで、どのように行うか、具体的な実施計画を作成します。これが計画というものです。計画には2つの機能がある、第一は目的・目標の設定、第二は目的・目標達成手段の検討、などと何回も申してきましたが、その第二の目的・目標達成手段の明確化なくして計画とは言えないということです。

担当部門が作成する実施計画は、5W1H(Who誰が、Whenいつ、Whereどこで、What何を、Whyなぜ何のために、Howどのように)の細部まで決めるのが原則です。Plan(計画)における目的達成手段の検討を、その通り実施すれば自然に目的を達成できるぐらいまできちんと検討します。だからこそ、方針管理をマジメに適用した組織は90%を超える達成率を実現できるのです。

実施計画の作成においては、上位方針達成にあたっての現状の問題点の把握・解析、実施項目の決定、管理項目、管理水準(目標)の設定、担当者の決定、実施スケジュールの決定を行います。手間はかかりますが、大和魂だけでコトが成るわけはなく、成功するようにするから成功するのであって、まさに段取り九分なのです。このとき、実施に必要なリソース(人的工数、財務資源、設備・機器、技術・知識など)を明らかにし、これらリソースの確保を考慮しなければなりません。もちろん、リソースの無駄遣い、湯水のごとき溢れかえるリソース確保は避けるべきですが、無い袖は振れないし、竹槍での戦いには無理があります。

計画(目的達成手段の指定)や設計(要求実現手段の指定)を疎かにして、くだらんことを考えていないで手足を動かせと指示する管理者を見たことがありますが、本当に情けなく思いました。どんなものでも初見で鮮やかに弾きこなせるほど賢いならよいですが、普通はそうではありませんし、自分一人で動くわけでないのですから、やはり少しは「組織で頭を使う」仕組みが必要だろうと思います。

5.2 プロジェクト計画書

日本で開発された「方針管理」では、実施計画は、基本的に、目的達成のための実施事項の明確化(実施事項、スケジュール、必要リソース)、管理項目(管理指標・目標値)だけなのですが、もう少し考慮範囲を広げ、必要事項を明確にしておいた方がよいと思います。その参考になるのは「プロジェクト管理」の知見の利用、とくに「プロジェクト計画」です。実質的には、日本でもその程度のことは考えていましたが、“形にする”という意味で、アメリカの流儀を真似ると良いと思います。

重要な方針・方策に関わる実施計画は、図表2に示すような項目からなる「プロジェクト計画」を参考にして作成するということが考えられます。



6. 進捗管理

上述した実施計画に基づいて実施をするわけですが、計画通りに進むとは限りません。あらゆることを見通した周到な実施計画であれば、リスクを回避し、問題を予測的に解決しながら淡々と進めればよいのですが、一寸先は闇、何が起こるか分かりません。何か起きたときに冷静に対処しなければなりません。

そのために、実施計画において定めた管理項目(管理指標)により、日、隔日、週、月、3ヵ月など、あらかじめ定めた頻度で、進捗状況をチェックして、処置が必要な状況を早く知るようにします。そして何かあれば、迅速に対応します。先月4.2節で「予測的PDCA」ということを口走りましたが、進捗状況の確認の際に、「このまま行ったら年度末には……」という視点も必要と思います。

対応を取るべきと判断されたら、まずは、その件をどうするか決めます。ヒト・モノ・カネをつぎ込んで遅れを取り戻すかもしれませんし、縮小・遅延計画に変更するかもしれません。

それに加え、問題を起こした原因に応じた処置を取ります。技術的難しさ、仕組みの悪さのためなら、体制を立て直します。環境変化によるなら課題そのものの意義も見直します。これらを的確に実施できるためには、未達という問題の構造を理解、分析する実力が要求されます。方針管理に原因分析力、問題解決力が必須といわれるのは、進行中のプロジェクトの的確な進捗管理のためと、次章で検討する「振り返り(反省)」のためです。

7. 振り返り

7.1 振り返りとは

「振り返り(反省)」にも方針管理の特徴が如実に表れます。年度末などにおいて、その年度全般を振り返り、未達原因の深い分析を行い、得られた知見、教訓を次年度以降に反映します。これを「振り返り」「反省」などと呼んで重視します。

年度末近くになると、各部門・各階層の実施計画に展開された課題の達成状況が把握され、全体としての達成状況・問題も把握されます。そして問題の構造、さらに原因が分析されます。この段階で行われる原因分析は、すでに済んでしまった重要な教訓的な未達事象に対して行うものですから、再発防止、未然防止のヒントを得ることが目的となります。

応急対応については、基本的には「進捗管理」で実施されているはずです。年度末に行う対応としては、目標未達の課題について、とりあえずどうするか、とくに来年どうするかを決める必要があります。課題によっては、他の重要課題との関連で取り下げてしまうこともありますが、次年度も継続したり、計画を練り直して取り組むことになるでしょう。

このような「振り返り」は期央でも実施することがあります。年度の途中における進捗確認の一つと位置付けられるのですが、その時点での未達・過達の課題、あるいは期末に達成できそうにない課題について、状況や原因の分析を通常の進捗確認よりは深く実施し、以降の実施計画の変更につなげたりします。

7.2 分析

「振り返り(反省)」の最初は、その課題に関連して設定した管理項目(管理指標)についての目標(管理水準)に対する実績の評価です。要は、目標が達成できたか、できなかったかです。「振り返り」においては、目標と実績の差の分析を重視します。課題を分解し、どこにどの程度の差があるか、その原因・理由は何であるかについて、かなり深い分析をすることを推奨しています。

この分析において最初に行うのは、実施計画通りに実施したか、あるいは実施できたかどうかです。ここでは、未達原因の分析において、「実施計画が妥当であったのか」それとも「計画通り実施しなかったのか」に主眼を置いていることになります。

この分析において、「4 Student Model」なるものが提案されています。結果である「目標の達成/未達成」と、そのためのプロセス・手段である「実施における十分/不十分」の2×2の4つに分けて、問題の分析をしようというのです。目標未達の場合、上述したように、実施計画の稚拙さか、計画通りに実施しなかったかを分析します。「4 Student Model」という名称は、マジメに勉強したかどうかと成績の良し悪しで4つに分類することとのアナロジーと、それぞれのタイプの学生の顔が浮かんでそれなりに面白いからなのでしょう。

この分析方法は、それなりに広く実施されているようですが、私はあまり感心しません。本質的には良い方法と思うのですが、その本質を理解せず形式的な浅薄な分析で済ませてしまうことが多いからです。

目標達成の場合、実施計画通り実施していれば特段の分析はしません。実施計画通りやらなかったのに目標達成した場合、いろいろ分析しなければならないはずですが、結果オーライということでそれほど深くは分析しません。プロセス重視や要因系への注目という、品質マネジメントが力点を置く視点が希薄になりがちです。

目標未達の場合、実施計画通りにやっていなければ「計画通りに実施すべきだった」と分析してそれ以上あまり深くは分析しません。実施計画通り実施して目標未達の場合、計画が稚拙であったとして通常のなぜなぜ分析を行います。この分析についても、「4 Student Model」そのものが悪いわけではないのですが、このモデルに従って分析したということで、深い分析がされることは少ないようです。

7.3 PDCAを賢く回す

上述したような、ともすると浅薄な分析に誘導しないような方法を考えるべきと思います。その一つの方法は、「目標達成/未達成」という結果に力点を置き過ぎないように、「4 Students」のいずれのタイプに分類されたとしても、「目標」「実施計画」「実施」「環境条件」のそれぞれついて、深く分析するように努めることだろうと思います。

ことの成否を左右する主要因となるこの4つの側面について、それぞれ図表3に示すような視点で、「プラス側/妥当/マイナス側」の3つの状況に陥る因果構造を頭に置き、きちんと分析したいものです。



ここに挙げた因果構造はあくまでも一つの考え方ですから、これにこだわらずに柔軟に分析していただければと思います。

たとえ目的を達成していたとしても、それは、例えば、甘い目標設定や想定より良好な環境条件(神風)のおかげによる達成かもしれません。図表4に挙げるような状況が考えられて万事OKとはいかず、「」以降に挙げた側面についての、それなりの「振り返り」が必要です。



7.4 原因分析

何か問題があるとなったら、その因果構造の分析をすることになります。その方法については次月から「問題解決」「マネジメントシステムの脆弱性分析」で取り上げます。ワンパラグラフに凝縮してしまうなら次のようになります。

技術力、マネジメント力、それとも人間力(意欲、知識、技能)の問題かを明らかにし、また問題発生メカニズム、見逃要因構造、問題対応不備原因なども明らかにします。なぜなぜと問いつめるより、直接原因とともに、問題となってしまう誘因、遠因、背景要因などを明らかにします。対策も金科玉条では考えません。現実的な、少しでも現状を改善できる策を考えます。直接的根本原因をつぶさなくても、問題を起きにくくしてもよいし、早めに検出して対処できるようにしてもよいし、問題が起きても大事に至らないようにしてもよいのです。

「振り返り」における分析は、「方針管理の仕組み」の脆弱さについても行うとよいでしょう。ひとたび方針に挙げたことが達成できない要因を、いま運営している方針管理の仕組みに求めるのです。

8. トップ診断

8.1 トップ診断とは

わが国の品質マネジメントには、方針管理との関連で、トップ診断、社長診断、部門長診断などと呼ばれる、管理状況に対する興味深い診断方法があります。方針管理の最後の話題として、この「トップ診断」を取り上げます。これは診断であって監査ではありません。専門家が行うのではなくトップ自らが(広義の)品質マネジメントの効果的運営に関するレビュー、評価、課題認識、対応指示・指導を行います。

組織管理の体制として、通常は職位に応じた管理情報が経営管理者層にもたらされるようになっています。しかし、きれいにまとめられた報告は、ともすると真実を見失わせます。普通、最前線の従業員からトップまで、名称はいろいろですが、①第一線の従業員、②主任・係長、③課長、④部長、⑤取締役、⑥役付き取締役(常務・専務・副社長など)、⑦社長・会長と多くの組織階層があります。これらのフィルターを経ることで、黒が白に変わる、いやそれほどでなくとも黒に見えなくなることが多いのですが、トップ診断は、経営トップ自らが現場の第一線の管理・監督者や従業員との対話を通して、経営・管理の実態を知る絶好の機会を与えます。

方針管理が、海外とくにアメリカに紹介されたとき、経営者が喜んだのは、自分のやりたいことが組織を挙げた活動に通訳されていく方針管理の仕組みでした。同時に、トップ診断についても、監査auditでなく診断diagnosisという用語に新鮮さを覚え、またそれが自ら現場の実態をもとに具体的事項について調査・指示をする機会であることに、日本的な経営管理の特徴の一端を見る思いもあって強い関心を示しました。

8.2 ことはじめ

日本の品質管理の発展過程において、トップ診断がいつどのように始められたかについて、興味深い逸話があります。それは小松製作所(現コマツ)存亡の危機に関連しています。昭和30年代終わり、貿易自由化、資本自由化など日本の開放経済体制への移行の過程で、建設機械は言ってみれば生贄としてこの厳しい政策の適用領域となりました。小松は当時国内ブルドーザー市場の6割のシェアを確保していましたが、アメリカの巨大建設機械会社キャタピラーが、日本に参入してくることになりました。キャタピラー三菱です。小松はつぶれると、当時の誰もが思っていました。

この危機を乗り切るため、小松はTQC(総合的品質管理、全社的品質管理)を導入します。キャタピラーのブルドーザーをバラバラにして徹底研究し、基本的には真似をして、自社製品の品質・信頼性の画期的向上を図りました。これを「マルA作戦」と呼び、最優先活動と位置づけ死にもの狂いで頑張りました。その結果、国内シェア6割は死守し、昭和39年(1964年)にデミング賞実施賞を受賞します。

この品質管理推進を指導したのが、日本の近代の品質管理の父ともいえる石川馨先生です。私が引き継いだ講座の先々代の教授です。初代経団連会長・石川一郎氏の長男、鹿島の石川六郎元社長・会長の長兄です。石川先生が関わりを持ったのは、当時の小松の社長・河合良成氏の長男で、後に社長・会長になる河合良一氏が石川先生と東京高校(現・東大教養学部)の同窓だったからです。河合良一氏は品質担当の部長でした。石川先生は指導を引き受けるにあたり、同窓である河合良一氏に、自分が工場を訪問して組織的品質改善に取り組むすべての場面に同席するようにという条件をつけたのです。河合良一氏は、この経験を通じて、品質管理という横串的部門の責任者として全社の現実をつぶさに見て、泥臭い実態の観察、考察から得られる知見がいかに重要かを理解し、自分がトップになったあともこの活動を続けるのです。

小松はまた当時、「旗管理」という方針管理の萌芽的手法を編みだしますが、それもあって、わが国の品質管理において、トップ診断が、方針管理に関わる方法論と位置づけられ、発展していくのです。

方針管理の発展とともに、トップ診断についても、各社で独自の工夫がなされます。こうしなければトップ診断とは言えないというような規則があるわけではありませんので、有効と思う方法で自由に行えばよいと思いますが、基本として、

① トップ層自らが行う(自らが理解し、自らの意思決定に活かす)
② 現場第一線の実態の把握に努める(タテマエでなくホンネの把握、伝聞でなく自らの見聞に基づく実態把握と意思決定)
③ 共同研究・奨励の場と認識する(荒さがし・叱正の場ではなく、課題の共有・解決への誘導・指示・支援の機会)

は守った方がよさそうです。

8.3 トップ診断の内容

トップ診断の内容は、目的に応じて多様ですが、大きくは以下の3つに整理できます。

• 方針管理で掲げられた方針、課題の達成に向けての進捗のレビュー
• QCD(品質、原価、納期・量)など経営要素についての重要課題の総合的レビュー
• 各部門の日常管理の実態の診断

第一の「方針管理の進捗レビュー」は、すでに見てきたように、方針管理の仕組みそのものに組み込まれていますので、改めてトップ自らが行う必要はないとも言えます。しかし、トップの方針が目標・方策に展開され、さらに実施事項計画に詳細化され、進捗していく状況を、そもそもの方針達成の視点やトップの思いの実現の点から、妥当であるかどうかを確認することに意味があると考え、特定の方針について取り上げることがあります。

この確認を、総花的に行う、もしくは管理項目(管理指標)による把握を基礎に行うのではなく、事例・ケースを取り上げて具体的に検討した経緯の中間報告に基づいて行うのが普通です。いわゆる管理屋さんに言わせると、少数の事例など見てもダメで、総合的な指標で判断すべきだと軽蔑されるのですが、そんなことはありません。個々の事例・ケースの研究から意外な事実が分かります。ことの経緯、因果メカニズムが普遍的なものかどうか判断できる能力があれば、まとめられた数値を見て行うより管理対象の実態について遙かに適切な判断ができます。

また進捗が思わしくない背景の理解、環境の変化に応じた対応の必要性の認識など、トップ自らが直接ヒアリングして迅速に手を打つことが重要な場合には、有意義な機会になります。度胸のある図々しい課長クラスは、この機会に、多少のお叱りは覚悟のうえで、緊急に実施しなければいけないことをトップに認識してもらい、対応に必要な要員とお金をちゃっかりいただこうと虎視眈々とねらっています。

第二の「重要経営課題の総合レビュー」もまた、機能別管理(経営要素管理)の枠組みのなかで、特定されている課題について対応の進捗管理はなされるようになっていますので、とくに設定する必要はないように思えます。しかし、ここでも具体的事例を取り上げて検討する、トップ自らがその検討に加わるということで、大きな効果が期待できます。

経営管理の仕組みがまともなら、その年度あるいは2〜3年を見越した経営課題は明らかにされています。そしてそれらが展開され、各部門、委員会、プロジェクトチーム、タスクフォースなどによって、課題解決、課題達成に向けて改善・改革活動が進められていることでしょう。これをトップ陪席のもとで、具体的事例・ケースを題材にして、課題の認識は正しいか、方策は技術的・経済的にみて妥当か、活動の阻害要因は何か、テコ入れの必要はあるかなどについて検討し、明らかにされた課題を敷衍化し、広く対策を講じます。個々の事例で深く理解し、その知見を広く適用するのです。

8.4 日常管理の実態の診断

第三の「各部門の日常管理の実態の診断」こそが、本来のトップ診断だという方もいます。その典型的な方法は、課・グループ程度のあまり大きくない業務範囲を取り上げ、日常管理の実態をトップ自らが「診断」するというものです。

図表5に質問と調査項目の例を挙げておきます。



トップによる「各部門の日常管理の実態の診断」における質問の例をご覧になって、日常管理の進め方のPDCAに沿った説明そのままではないかと思われたことでしょう。その通りです。日常業務の進め方が原則通りにできているかどうか、管理の仕組みやツールなどを最近の業務実施例でトレースしているのです。

実は、この診断の方法としてちょっとひねったやり方もあります。PDCAのCから始めるのです。業務目的の達成度合いを計る管理項目の最近の水準を確認し、不十分な面や基準に達していない例を見つけて、その原因を明らかにしていく方法です。下手をすると誰かを責めることになってしまいますので難しい方法ではあります。過去の不満足な状態、過去の失敗をいまさら悔やんでも仕方ないことであって、その経験から日常管理の仕組みを改善するための教訓、ヒントをどう獲得し、現実にレベルアップしてきているかを探っていきます。美しい言葉を使うなら、マネジメント力のレベルアップの実態を診断している、となります。

こうした診断を正しくできるようになるためには、トップに少し勉強していただかなくてはなりません。結果がすべてではなく、満足な結果を得る可能性を高めるために仕組みを改善することの意味を分かっていただきます。過去の事実を明らかにしますが、それは誰をどのくらい厳しく罰するかを決めるための犯罪捜査ではなく、経験から学ぶべき事項を抽出するためであることを理解していただきます。ともすると短兵急に結果を求めがちなトップ層の悪い癖を直していただきます。その意味で「誰がやった」は禁句です。人が悪いのではありません。その人のやり方がまずいのです。そのやり方のまずさを明らかにして、仕組みに反映するようにしていただきます。

8.5 トップ診断の意義

こうしたことを理解した上でトップ自らが行う現場診断は、役員会などで報告される総括的な業務パフォーマンスなどでは窺い知れない現場の実態や、組織の体質、文化、風土の真の姿を実感できる貴重な機会でもあることがご理解いただけると思います。

組織活動の大半を占める日常管理の実態をトップ自らが肌で感じる機会というものはそれほど多くありません。ともすると実態とかけ離れた認識を持ち、ときに誤った経営判断をする遠因となります。逆説的ですが、日常管理の仕組みが良くできていればいるほど、社長室・役員室に居ながらにして日常の活動状況が把握できるようになり、すべてを把握した気分になってしまいます。これが危険この上ないのです。ささいに見えるボヤが発生するに至るメカニズムの全貌を自ら知り、それを一般化して適切な手を打つ機会を持つべきなのです。だから、小松製作所の河合良一氏は社長になってもこの診断をやめようとはしなかったのです。

昨今の不祥事を見るに、トップの行動基準、価値観に疑問符がつく場合もありますが、一方では、立派なトップなのに、その価値観が中間管理職層に伝わっておらず、限られた部門ではあっても組織ぐるみと糾弾されても仕方のない例があり、普段からこのような診断を行っていればよかったのに、と思わずにはいられません。

トップ診断の特徴は、トップ自らの組織の各階層に対する事例に基づく診断と、理論・たてまえより実施結果とそのプロセスの重視という2つに集約できるでしょう。多くのフィルターを経たきれいにまとめた報告より、1件の業務実施例の診断から得られる情報に価値があることが多いため、トップはこの機会に組織の本質的な弱点をつかむことができます。また、中間管理職にとっても、組織全体の目的との関連で自分の仕事を原点に返って見直す機会となり、達成すべき課題や問題の構造が明らかになり、実力を向上する好機となり得ます。さらに、直接対話することによるトップと中間管理職の距離が縮まるという効果にも大きなものがあります。

問題

[1] あなたの部門が担当することになった課題についての「実施計画」をレビューしてみて下さい。どのような側面を強化すべきと考えますか。それなりに考慮すべきことが多いやや難しいプロジェクトについて、なるほどと思える「プロジェクト計画」が策定されていますか。現状のどこを改善・強化すべきとお考えですか。

[2] あなたの部門における課題達成プロセスにおいて、適切な「進捗管理」が行われているかどうかレビューしてみて下さい。進捗は的確に把握されていますか。対応処置は適時適切ですか。計画の練り直しを考慮すべき状況のとき、適切に対応していますか。

[3] あなたの部門において、年度末に行う「振り返り」の内容をレビューしてみて下さい。次年度への反映は適切ですか。課題達成プロセスの分析からどのような教訓が得られ、それが将来にどう活かされていますか。期央の中間評価が行われているとき、その内容をレビューしてみて下さい。予測的PDCAの視点でのフィードバック機能が働いていますか。

[4] あなたの組織や部門では「トップ診断」や「部門長診断」は行われていますか。行われている場合、その内容についてレビューしてみて下さい。どう改善すべきと考えますか。行われていない場合、企画してみようと思いますか。どんな準備が必要と考えますか。