連載記事 飯塚悦功
第20回 問題解決(1)

「いよいよ今度は『問題解決』ですね。楽しみにしております」 アイソス発行人である中尾さんからの、原稿締切日確認のメールのなかの一節です。これには伏線があります。

だいぶ前になりますが、連載第12回の「継続的改善」の最後に「改善の基盤−問題解決力」という章を設けて、有効な改善を組織的に推進していくためには、その基盤として発生した問題の解決能力が必須であること、問題解決力の持ち主は高い能力の持ち主であることを述べ、「問題解決力」とはどのようなことができる能力なのかを示す簡単な表を掲載しました。そして、「問題解決」については、連載の数回あとで本格的に取り上げ、問題のタイプに応じた問題解決法や、マネジメントシステムの脆弱性分析などについて紹介するので、しばらくお待ちくださいと結びました。

それに対して中尾さんは、「問題解決」の内容を早く知りたいと思ったようです。「原稿を読むと問題解決についてすぐに読みたくなります。半年ほど待たなければなりませんが、そこを焦らすのは飯塚先生の作戦ですか(笑)」とのことでした。

もちろん、じらすつもりはありませんでした。問題解決を早く取り上げることは可能ですが、「管理の原則」の後に、「マネジメントシステム」を話題にして、日常管理、方針管理、継続的改善の基本技術としての問題解決法(個別問題の解決、マネジメントシステムの改善)と続けようと考えたのです。その問題解決について、これから3回ほどかけて考察したいと思います。

1. 問題解決に対する基本スタンス

1.1 問題解決の重要性

品質管理においては、問題解決をことのほか重視します。なぜでしょうか。もちろん問題が起こるからです。しかし、起きてしまった問題になぜこだわるのでしょうか。起きてしまったことは、ある意味では仕方のないことです。過去の問題を振り返って懺悔したところで、覆水が盆に返るわけもなく、なぜそれほどまでに深い分析にこだわるのでしょうか。

PDCAサイクルを思い出して下さい。Act(処置)として「応急処置」と「再発防止」(「未然防止」も含めて)の2種類を考えました。応急処置とは、Plan(計画)で決めた当面の目的・目標を達成するための対応です。これも問題解決と言ってもよいかもしれません。この能力に長けている組織は優れていると言えます。たとえ問題が起きてもテキパキと対応し、とにかく目的・目標を達成するからです。再発防止は多くの場合、Planのうちの目的達成手段(手順、手続き、業務・作業標準)の改善によって、将来同様の目的を達成する際の確実性を高めるために講じられます。PDCAを回すという意味が、応急処置では、目的・目標を達成するために「手直し」をするということだったのですが、再発防止では、「目的達成方法のレベルアップ」を意味しています。

品質管理で問題解決を重視するのは、失敗という経験から、目的と目的達成手段との関係を、望ましくない結果をもたらした原因の理解を通してより詳細に把握し、より良い方法を模索することがマネジメントのレベルアップに有効だからです。

「問題解決」というと、言葉の響きから後ろ向きの小さなことのように受けとめる方がいらっしゃるようですが、視野が狭いと思います。問題解決という用語が適切でないなら、「課題」という用語も用いて、問題解決・課題達成と表現してもよいと思います。もっとも課題だって、問題には違いありませんが。

私は「問題」を「自分たちの将来までをも考えたときに、いま実施しておかなければならないこと」くらいの広い意味ととらえたいと思っています。「あるべき姿と現実とのギャップ」と表現してもよいかもしれません。

さらに私は、「問題解決力」があるというのは大変な高い能力の持ち主で、考えようによっては「マネジメント力」と同等の能力と言えるとも考えています。なぜなら、問題解決力があるということは、何かコトが起きてもテキパキと片づけて前進できることを意味しています。それだけで積極的な良い仕事ができる基盤になります。また、問題解決力があるということは、因果関係、目的・手段関係、それにリスクを考慮した周到な目的達成のための実現手段を導く能力が優れていることを意味しており、これはマネジメントにおいて重要な、優れた計画を立案する能力があることを意味していると考えているからです。

1.2 問題発生の深いわけ

問題発生には深い「わけ」がある。この「わけ」が分かれば、組織も個人も学習を重ね成長できる。その学習プロセスにおける重要な要素が因果構造の分析である。これらが私にとっての「問題解決」の基本スタンスです。

例を挙げます。題して「電話取り次ぎミス」です。

プルルル……。電話がなる。

「はい、A株式会社役員秘書室です」
「もしもしB社の金子というものですが、今週の金曜日の会合の件で事前にちょっと打ち合わせておきたいことがありますので、イイヅカ常務に取り次いでいただけませんか」
「あいにくとイシヅカは席を外しております」
「席を外しているというのは、社外へ行っているということですか」
「はい福岡に出張中です」
「変だな(独り言)……。金曜日の案件で担当チームを集めて鋭意検討していると思っていたんだが。まあいい。私は、今日はずっと席にいますから、常務に連絡をとって電話をくれるように伝言していただけませんか」
「承知いたしました」

そしてこの秘書は石塚常務に連絡をとる。一緒に出張していた技術部の山田課長と連絡がとれて、<あらいけない、間違えたかしら……>となる。山田課長によれば、B社の金子氏が連絡を取りたかったのは飯塚常務のほうであって、石塚常務ではないはずだというのだ。
早速社内にいた飯塚常務に連絡してやはり間違いであったことが分かる。

「それで、どこの金子さんかね」
「B社の金子さんとおっしゃっていました」
「B社はいい。技術の金子部長か、それとも営業担当の金子常務か」

ここで、この経験4ヵ月の新人秘書は再び言葉を失う……。



皆さんはこの問題をどうとらえるでしょうか。名前を聞き違えた小さな電話応対ミスと考えますか。ちなみに同じ秘書室にいるベテランというにはまだ日も浅い経験2年の池田嬢はこの手の間違いをしたことがありません。この手のミスをしない池田嬢はこう言います。

「役員秘書室にかかってくる電話には、いくつかのタイプがあります。会社のビジネスに直接関連する社外の人、同じく社内、社会的活動を通じて接点のある学協会関連、大学の先生など、それに仕事に関係ない友人、家族、セールスなどです。役員一人ひとりに専属秘書がつく場合、その役員の交友関係を把握するのは当然です。対応する役員が複数になっても、同じように交友関係を把握しなければなりませんが、複数なので間違えないようにきちんと管理しなければならず、むしろ重要になります」

どの役員にはどんな人から電話があるか、その名前と用件の類型が整理できていなければ秘書は務まらないというのです。B社の金子さんが飯塚常務に電話してきたという事実だけで、池田秘書は即座に用件の概要を理解しました。石塚常務に間違うわけもなく、2人いる金子氏のうち偉い方の人であることはすぐ分かるというのです。

こう考えてみると、この問題は「電話応対ミス」として簡単に片づけるべき問題でないことは明らかです。外部との接点であるという点で重要であり、一般論としても、コミュニケーションにおける非効率さが間接業務の生産性阻害の重大要因である点からも見過ごせません。もちろんこの新人秘書を気の利かないお嬢さまだと非難して済む問題でもありません。彼女が失敗をしてしまうのは必然であり、池田嬢がうまくこなすのにもまた理由があります。単に飯塚と石塚を聞き間違えたわけではありません。

電話における「ヒアリング能力」とは何でしょうか。聞き取った名前などから、その背後にある用件、電話をしてきた理由、重要性、緊急性などのイメージをつかむこと、大げさな言い方をするならビジネスプロセスにおけるその電話の位置づけを知る能力です。この訓練をしていないこと、重要性を認識して電話取り次ぎに必要な知識の体系が整理できていなかったこと、これがこの電話取り次ぎミス事件の本質なのです。

たかが新人秘書の電話取り次ぎミス、気をつけさせればよいし、慣れればそのうち何とかなる、次に秘書を雇うときは目端の利きそうなのを採用することにしよう、というようなことでお茶を濁さないで、この事件が、仕事を満足にこなすためにどのような知識・情報を持っていなければならないかに関わる重要事項かもしれないと認識できるのなら、皆さんが遭遇する「事件」の性質に応じて、問題の深層を理解し適切な手を打つことにしようと考えてほしいのです。ことと次第によっては、業務の定義、必要な業務知識の定義、業務知識ベース・手順・マニュアルの整理、教育・訓練方法の検討などが必要になるかもしれないと認識して、様々な事象を見つめてほしいのです。

私たちはそれなりの思惑を胸に様々な企画・計画をし、目的を達成しようと行動します。そしてときに「事件」が起きます。事件は多くの場合、起こるべくして起きています。1件の事件は、運が悪くたまたま起きたと思われがちですが、多くはそうではありません。「仕事に対する考え方」、「仕事の進め方」、「目的達成に必要な固有の知識・技術・技能」など、本質にかかわるところに何らかの問題があって、その結果として事件が起きるものです。一つの事件が起きるということは、その組織の技術・知識、マネジメント、そして人に関わる不備の現われであって、一つの事件のかげには何件もの起きずに済んだ事件が潜在していると考えるべきです。事件はいやなものですが、その経験から多くのことを学びたいと思います。

事件には、遠因があり、真因があり、誘因となる状況・環境があります。もちろん、事件に至らしてしまう直接の原因があります。こうした原因を明らかにしたいとは思うのですが、どこまでどう分析するか、よく考えなければなりません。問題解決について少しでも勉強した方は、まずは応急処置だけではダメだと息巻きます。そして原因分析が浅いと鬼の首でもとったように責め立ててきます。しかし、私たちは日常の業務のなかで、山ほどの、多くは小さな「事件」に遭遇します。それらすべてに対して、偏執狂のように例のあの「根本原因分析」をすることはやりすぎのような気がします。

日本の夏は暑く本当に暮らしにくいです。最近では地球温暖化の影響か、都市部のヒートアイランド現象か知りませんが、老年には耐えられません。東京の緯度はだいたい北緯35度くらいです。東京の夏が暑く、冬は裸で暮らすにはつらいほど寒い根本原因はなんでしょうか。地球の自転軸が太陽の回りの公転平面に対して垂直ではない(地軸が傾いている)からです。暮らしやすくするために地軸を真っ直ぐにしようとするのは賢くありません。エアコンを設置するとか、厚着や薄着をするとか、かき氷でごまかすとか、熱燗で身体の中から暖めようなんてことを考える方が優れています。

ヒューマンエラーが起因となっている問題の根本原因分析の危うさは誰もが経験しているはずです。「なぜ、なぜ、なぜ」と責め立てられて、ああ分かったと爽快感を味わうことはありません。下手に真因を追求すれば、私たちの多くは自身を抹殺しなければなりません。組織の存在そのものを否定しなければならなくなります。まっとうな根本原因分析については別途検討したいと思いますが、まずは、私たちが問題に対して適切な対応をするためには、問題発生の「メカニズム」を理解する必要があるということを申し上げておきます。

1.3 問題発生のメカニズム

ごく自然に、問題発生の「メカニズム」を理解する、と申しましたが、これは容易なことではありません。「問題の原因には多様な側面がある」、「問題の原因分析には複眼的思考が必要である」ことに留意しなければなりません。

これから、皮相的な意味での分析ではなく、問題の構造、問題発生のメカニズムを理解し、それに応じて適切に対応するために、どのような基本的考え方に従い、どのような方法で問題の分析、原因の分析をすればよいのか、検討していきたいと思います。その手始めに、問題の構造、問題発生のメカニズムに関して、私がどのようなイメージを持っているのか、少しだけ紹介しておきます。

問題意識、価値観に起因して問題が発生することがあります。本来なら問題と認識しなければいけないことが問題にされず、あとで火を噴くというような事態を引き起こすという意味です。問題意識を持てない理由、背景要因は深遠です。組織は個人の集まりですので個々人が問題意識を持てるかどうかが重要ですが、一方で個々人の思考形態・行動様式を左右するのはその組織の運営スタイルです。外界に関心を持ち自己を見つめ実施すべきことを自覚する外向きの組織か、内部コミュニケーションが良く相互啓発の機会の多い組織か、誰が言ったかでなく事実を重視し不適切なことや改善の余地を看過しないことに価値を認める組織か、積極的・前向きで将来ビジョンを共有している組織か、家訓・社是・理念など組織のDNAとも言える価値基準、行動原則を持っている組織かなど、組織運営における価値観、行動原理が深因であるのが普通です。内向き企業、内部コミュニケーションの劣悪な組織、意思決定がエライひとの顔色で決まる組織、まともな組織文化・風土の欠如している企業、危機感のない組織、問題意識の低い組織、改善意欲のない組織を思い浮かべてみて下さい。いろいろな問題が起こりそうなことは容易に想像がつくと思います。

問題を起こす原因には、技術、マネジメント、人、組織風土・文化など多様な面があります。製品・サービスに固有の技術がなければ問題の山となるでしょう。ここで技術と言っているのは、目的達成のための再現可能な方法論というような広い意味です。ミスを防ぐにはこの原則を守るのがよい、この手順に従うのがよいというようなルール、原則、教訓なども含みます。こうした技術があっても、それらの技術を現実に組織で適用するためのマネジメントシステムを有していなければ問題が起きます。責任・権限、手順・マニュアル、技術・知識ベースなどが整備されていないと、どのような先端技術・知識も組織のものとはなりません。さらに、そのマネジメントシステムにおいて考え行動する人間の意欲、知識・技術、技能が原因で問題が起きることもあります。

問題が問題になるには経緯があります。問題が発生し、その拡大が見逃され、ついに問題として姿を現し、それが適切に処置されずに火を噴きます。何が発生原因で、どう見逃され、どう拡大されてしまったかというメカニズムの分析も意味があります。

似たような見方で、目的達成のためのプロセスのどこに不備があるかという見方も問題の構造を理解するためには有効です。価値観、ビジョン、目標設定、構想(企画)、設計(計画)、実行、確認、修復処置、……というプロセスのどこに問題があるかという見方です。

いろいろ挙げましたが、どこにどのような問題・不備があるか理解し適切に対応するために、このような意味での「問題発生メカニズム」の全貌を理解する必要があります。

メカニズムに関連して、すべての問題を分析しなければならないというトラウマから逃れることも必要と思います。問題を分析する目的は、将来に生かせる教訓を得るためです。処罰のためでも、報告集計のためでもありません。そうであるなら、教訓を得るのに意味のある、同様のメカニズムで再発が予想される問題を分析対象にすべきです。問題発生にいたる因果連鎖の一部が、他の場面で再現するかもしれない教訓的な事例を分析の対象にすべきです。

2. 問題解決の定石

2.1 問題解決のコツ

問題解決・原因分析にはコツがあります。どのようなコツなのか、それを再確認してみようと思います。

問題解決への道筋として、一般的には、

事件・問題の発生(将来発生するかもしれない問題も含めて)
→ 状況の把握
→ 構造・原因の理解
→ 対応策(応急処置、再発防止・未然防止)

というステップを経るでしょう。この世にあふれる問題解決法に関わる本には、これらの各ステップにおける様々な留意点が記述されています。

問題解決において重要なことは、「適切な対応策」を講じることにあります。望ましくない事象に適切に対応するために必要なことは、以下の2つだろうと思います。

① 問題を問題と感じる感受性・意識を持つこと。
② 問題発生の構造を明らかにすること。

第一項ができれば、問題に対してタイムリーに手が打てます。ボヤのうちに問題を処理できるかもしれません。第二項ができれば、問題発生の全貌、問題発生の因果関係を理解できます。それによって適切な再発防止策を講じることができますし、未然防止策も可能となります。

こうしたことをうまく進めるために必要なことは何でしょうか。「構造モデル」である、と私は信じています。起きてしまった問題でも、まだ起きていないけれども対応の必要な課題でも、これらがどのような姿をしているか理解できなければ適切には対応できません。理解するために何が必要でしょうか。もちろん、遭遇した個別の問題ごとに、然るべき分析によって因果構造を明らかにすることはできるでしょう。でもそれだけでは不十分であり、非効率であり、分析する人の能力に依存しすぎます。この世に起きる問題は、宇宙の法則に従って起きます。そうであるなら、必ずや問題発生の法則を反映した「類型」があるはずです。これら類型をどれほど体系的に整理しているか、これこそが組織としての問題解決能力を左右するものであると信じます。

起きてしまった問題への対応にあたっての基本的考え方は、その問題事象の不適切な状況を解消するとともに、その問題を通して教訓を得て仕事のレベルアップを図ることも重視することにあります。そのため、原因分析においては「深さ」と「広さ」を追及します。真因も、遠因も、環境も、引き金も、もちろん直接原因も明らかにします。これらの事象間の関係も明らかにします。問題の真因は技術、管理、経営、文化・風土、……と様々な面に潜んでいますし、また複雑に絡み合っています。技術の問題に見えて、実はマネジメントの問題かもしれず、組織の文化・風土に遠因があるかもしれません。問題解決とは、これらを明らかして、現実的な対応をするための方法論であると考えています。ただ単に、火消しをするだけとか、責任追及をするとか、原因らしきものの分類・整理などでお茶を濁すのではなく、問題を起こし、ボヤのうちに消し止めることができずに延焼拡大していく、その構造を明らかにして適切に対応したいと思います。

2.2 問題解決に必要な3つの活動

問題の構造を知り、適切に対処するためには、少なくとも3つの活動が必要です。それは、①状況把握、②原因構造解明、③対応検討です。

① 状況把握

「状況把握」とは、いったい何が起きていて、何が問題であるのか理解するという意味です。起きていることが明らかに問題だと分かることもありますが、何かが起きていることは確かでも、そのどこがどのように問題なのかよく分からないこともあります。これを明らかにしておかないと、解決すべき問題を間違ってしまいます。

さらに、その問題に関連して知っておくべきことを理解するということも含んでいます。いつでもそうなのか、いつからそうなったのか、それはどんなことと関連していそうかなど、その問題の起き方にどのような特徴があるのか把握します。

まず重要なのは「事実の把握」です。事実を把握するために「観察」をします。これには、目で見る観察も、科学的な測定・分析も含まれます。人が何を考えどういうつもりで何をしたか(人の思考プロセス)については、上手な「質問」によって、「なぜ」ではなく「どのような状況で何があったかのか」を知ることが大切です。

その上で「実態の把握・特徴の抽出」が必要です。その基本的な方法は、「比較(何が違い、何が同じか)」と「変化(いつから何が変わったか)」です。比較においては、基準、対照、以前、良い例/悪い例などと比べて何がどう違うかを知り、把握した事実の特徴を把握します。変化も同様です。いつからどう変わったのかという情報は貴重です。時間そのものは原因ではあり得ませんが、時間とともに変わった何かが原因に関係しているかもしれません。これらの考察が原因構造分析に大いに役立ちます。

② 原因構造解明

「原因構造解明」とは、なぜ、どのようにして、そうなってしまったのか、問題が起きてしまったその因果構造、問題発生メカニズムの全貌を解明することで、問題解決における原因分析の中心となる活動です。ここで扱うような問題に対しては、とくに業務システムの不備や脆弱性に起因して、どのようなメカニズムで問題が起き、拡大していくか明らかにすることに力を注ぎたいと考えています。

「原因構造解明」においては、その問題の「生起・因果」を解明します。すなわち、状況把握の結果をもとにして、問題が発生する原因・理由の論理的な連鎖を検討します。まず、事実に基づく論理的思考により問題発生の想定メカニズム(仮説)を考え、次に、いつ起きていつ起きないか、論理矛盾はないか、見落としはないかなどを検討(検証)します。

さらに、「問題発生メカニズムの全体像」を明らかにします。問題発生に至る推移、ステップの連鎖(プロセス、経緯)を明らかにします。あるいは、問題領域にどのような要素があるか、それがどう絡み合っているかを明らかにします。

③ 対応検討

「対応検討」とは、その問題にどう対応するか、さらに将来起きるかもしれない類似の問題にどう対応するか検討することです。基本は、原因構造解明で明らかにできた問題発生メカニズムの全貌をグッと睨んで、どの因果連鎖を断ち切るか、どのように軟着陸させるように誘導するか、広い視野から考察することです。

重要な視点は、「因果連鎖の切断・誘導」です。すなわち、問題発生メカニズムの全貌を考察して、因果連鎖のどこを断ち切るのがよいか、あるいはどのような連鎖に誘導し落ち着かせるのがよいか検討します。

また「効果・影響評価」も重要です。すなわち、取ろうとしている対応策の効果、影響(ねらった効果、副次効果、副作用など)、その対応策に必要なコスト、投資を検討して、実現可能で合理的な対応をします。

さてさて、前口上が長すぎました。大きな風呂敷を広げましたが、これを上手にたためるか、具体的方法について、次月以降、少し詳細に検討していきたいと思います。

問題

[1] これまでの業務経験から、優れた問題解決能力が優れたマネジメント力に通ずると感じた例を思い起こして下さい。それがどのような意味でのことか、またそのときどのように対応していれば自身のマネジメント力を向上させることにつながったと思われるか、考察してみて下さい。

[2] 例に取り上げた「電話取り次ぎミス」について、これが何らかの「教訓」を得る機会になると思いますか。そうであるなら、どのように分析し、どのような範囲までの対応を取りますか。そうは思わないということなら、それはなぜですか。

[3] 「問題発生のメカニズム」と称していることの意味をお分かりいただけますか。「メカニズム」という表現に込めた私の思いを拡大解釈し、それがどのようなことまで示唆している可能性があるか、それがどのようなことに役立つ可能性があるのか、考察してみて下さい。

[4] 「状況把握」「原因構造解明」「対応検討」という用語から、あなたが思い浮かべるイメージを書き留めておいて下さい。これから3回ほどで綴る問題解決のシリーズが終わったときに、改めてどのようなことをすることになるのか再考し比較してみる準備として下さい。