ISO審査員職務体験講座「JQA審査アカデミー」開講


日本品質保証機構(JQA)は「JQA審査アカデミー」を2021年7月に開設しました。これは、ISO審査員という仕事に関心のある人や将来ISO審査員への転身を考えている人を対象にした、ISOマネジメントシステム審査に必要な知識や力量の一部を6回にわたる通学講義・演習によって学習する研修コースです。「審査員の仕事を知ること」に重点が置かれ、JQAのなかでもとりわけ経験豊富な審査員が講師を担当し、研修プログラムの中には現役審査員との交流会も設けられています。同アカデミーの開設の目的、研修プログラムと受講メリットなどについて、JQA審査アカデミーの校長である江波戸啓之氏と運営事務局の小林佳葉氏から話を聞きました。本稿はアイソス2022年5月号の掲載記事を抜粋したものです。


一般的に知られていない審査員という仕事



−JQA審査アカデミーを開設された目的は何ですか。

小林 審査員の仕事に興味がある方に対して、審査員の仕事の面白さややりがいを感じてもらい、審査員の仕事を深く知ってもらいたい、そして将来のキャリアの候補に入れていただきたいというのが、JQA審査アカデミー開設の目的です。私は審査員採用の面接も担当しているのですが、面接にいらした方に聞いてみると、審査の休憩時間などに審査員の方と雑談して親近感を覚えたり、知人の審査員から審査の仕事について詳しく聞いたりしたことが、応募のきっかけになっていることが多いのですが、逆にそういうことがないと審査員の仕事がどういうものか知る機会がないのだと思います。一般的にはあまり知られていない審査員の具体的な仕事の内容について、JQA審査アカデミーを通じて知っていただければ、審査員を将来のキャリア候補に選ぶ方も増えるのではないかと考えています。

一方、日本は、自動運転やドローンといった高品質な技術力の分野や、コールドチェーン物流やシェアリングエコノミーといった新たなサービス分野においてISOで積極的に提案しています。日本は中国のように莫大な資金やリソースがあるわけではないので、戦略的にリソースを配分しながら強みを出していると思います。

−初回の実績はどうでしたか?

小林 第1期を昨年7月に開講し、月1回で6カ月間実施しました。受講者及び修了者は14名でした。そして、私どもとしてはありがたいことに、修了者から審査員になりたいとのご応募いただいた方もいらっしゃり、既に3名の方がJQAの審査員選考面接で合格されました。今後も修了者からの応募は続くと思われます。

審査の成功事例・失敗事例など実践経験から学ぶ



−JQA審査アカデミーの研修プログラムについて説明してください。

小林 コースは全部で6回にわたって実施されますが、参加される皆さまには受講前にeラーニングでISO 9001規格の内容について勉強していただいたうえで、第1回に参加していただきます。第1回では、オリエンテーションとISOの規格や認証制度の基本的な知識、審査員の仕事の概要などについても説明します。第2〜3回では、ISO 9001の規格解説の講義が中心になりますが、演習も取り入れています。第4〜6回では、模擬審査など実践的な演習が中心になり、最終回には修了テストを実施します。

江波戸 修了テストに加え、ほぼ毎回、受講生に対してバラエティに富んだ演習をしてもらい、その回答を提出していただきます。それについては、講師が添削をして返却することにしています。

−冒頭で、審査員の仕事の面白さややりがいを知ってもらいたいという話が出ましたが、研修の中でそれをどのように伝えていくのですか。

江波戸 例えば、審査をしていると成功事例、失敗事例というのを経験しますが、こういう審査をしたときは、お客さまからお褒めの言葉をいただいたとか、こういう審査をしたときには、お客さまからの評価が芳しくなかったとか、研修の中でそのような説明をしながら、審査員の仕事の内容を紹介しています。また第5回では当機構の現役審査員数名が参加し、受講生との交流会を実施しています。これは、受講生からの質問に対して現役審査員が答えるという対話形式で行うのですが、現役審査員が自身の経験から質問に答えるので、審査員の仕事の面白さややりがいを具体的に知ってもらういい機会が提供できていると思います。

−第1回で審査員の仕事の概要を説明されるということですが、どのように説明されるのですか。

小林 まずJQAのサービス方針やISO審査に臨む審査基本姿勢について解説します。また、JQA審査員のコミットメントなども解説しています。続いて、実際の審査業務を紹介します。審査を受ける側の立場ですと、自分が審査現場で見聞きした審査員の仕事しか知らないわけですが、実際の審査員の仕事というのは、審査の指示を受けてから事前準備を始め、審査後もJQAへの提出書類一式を作成するなど、さまざまな水面下での動きがあるわけで、その一連の仕事内容を説明します。さらに、審査現場で必要になる質問の仕方やメモのとり方なども紹介しますし、正しい日本語で審査報告書を書いていただくための演習もしていただきます。

−具体的には。

江波戸 日本語としてあまり美しくない書き方をしている審査報告書をさらにデフォルメし、サンプルとして受講生に添削していただきます。なぜそんなことをするかというと、審査のチームリーダーになりますと、チームメンバーの挙げてきた指摘事項や改善の機会などを、お客さまに出す前に添削しなければなりませんから、そういう作業に慣れてもらうため、受講生に体験してもらうわけです(図表1)。



−チームリーダーの意識を持って勉強してほしいということですか。

江波戸 そういう意図も含めています。審査員というのは、最終的には「主任審査員としてチームリーダーを務めてこそ」という職業です。

−第4〜6回ではどんな演習をされるのですか。

江波戸 主に実際の審査で遭遇するであろう課題を与え、受講生にそれを実施してもらうわけですが、最終日の第6回では、お客さまの品質マニュアルに近いような状態の文書を渡して、実際に審査を行ってもらいます。そのときには、わざと品質マニュアル等に穴を作ったりします。



審査員への転身を考えている方はぜひ参加を



−第1期受講生からは、どんな感想がありましたか。

小林 受講生全員から、受講の感想を含めたアンケートの回答をいただいていますが、その一部をご紹介しますと、「審査員としての心構えや気持ちの落ち着かせ方など、通常の学習では決して教えてもらうことのできない実務的な内容で大変良かった」「審査員の仕事は、非常にやりがいがあると感じ、状況が許せばすぐにでも第2の人生を歩みたい」「当初の応募目的は、今の会社の枠を超えて、世の中の品質向上に貢献したいと思っていたが、今回受講して、さらにその思いが強くなった」「審査事例の説明を数多くされたので、審査において役立ちそうな講義であった」などです。14名の受講者全員が1回も欠席することなく大変熱心に参加されていました。

−4月から第2期がスタートするわけですが、第1期の経験を踏まえて、改善したいところはありますか。

小林 第1期では、受講生の皆さんがかなり積極的に質問されましたので、第2期からは質問への回答時間をもう少し多めに取りたいと考えています。また、講義の内容の見直しも進めています。

江波戸 各回の終了後にアンケートを取り、その中でいただいた質問については、次回の冒頭で回答するというやり方をしていたのですが、第1期ではその分時間が足りないと感じましたので、受講時間を30分間増やしました。また大変ありがたいことに、第1期では遠くは九州から参加いただいた方もいらっしゃったのですが、遠方からの参加者の交通費を節約いただくために、土・日曜日を連続して受講できる月も設定しました。第1期は、土曜日開催で、毎月1回の6カ月コースでしたが、第2期以降は、土・日曜日開催を挟むことで、開催期間を4カ月に短縮しました。

−最後に、JQA審査アカデミーへのいざないを一言。

小林 審査員の仕事に少しでも興味がある方、将来審査員への転身を考えていらっしゃる方は、ぜひJQA審査アカデミーを受講いただきたいと思います。もし受講した結果、将来のキャリア候補に審査員という仕事が入らないとしても、審査員の仕事を知るということは今の仕事にも活かせますし将来の他のキャリアの助けにもなり、受講する価値は十分あると思います。

江波戸 JQA審査アカデミーでの講義が終わり修了証をお渡しする直前に、私はあらためて審査員の魅力について、受講生にお話ししましたので、その内容を最後にご紹介します。JQA所属の全審査員に対して、満足度調査を社内で行った結果、審査活動にやりがいを感じている審査員は、全体の96%以上という結果が出ています。さらにこの調査項目には自由記述欄があるのですが、ある70歳を超えた審査員は「この年でいろいろな審査員仲間と楽しく仕事ができて夢のようだ」と答えていますし、別の審査員は、「企業時代に尊敬するJQAの審査員と出会い、自分もその人のようになりたいと思ってJQAの審査員になった」と述べています。

「JQA審査員という仕事は、社会の公器である」と言っても過言ではありません。自らの仕事に誇りを持つことが可能で、かつ気力・体力の続く限り続けられる、それがJQA審査員という仕事です。JQA審査アカデミーをぜひ受講いただき、審査員の仕事の面白さややりがいを知っていただければと思います(図表2)。
(取材日時:2022年3月2日)





取材先: 江波戸啓之

一般財団法人日本品質保証機構(JQA) 審査事業センター 所長 (JQA審査アカデミー 校長)


取材先: 小林佳葉

一般財団法人日本品質保証機構(JQA) 審査事業センター 審査リソース課 課長 (JQA審査アカデミー 運営事務局)