書籍 × アイソスのコラボ企画
青木明彦さんの近著【ISOは「実行」】(発行:L.M.J.ジャパン)の中から「内部監査」に関係する36個のテーマを選んで、アイソスで1年にわたって連載しています。連載期間は、2020年4月号から翌年3月号まで。今回はその一部を紹介します。さらに、本稿の最後には、1年分の連載記事が【ISOは「実行」】のどのページにあたるかを示した対応表を掲載しています。
あなたは、どちらの内部監査員が好きですか?
上の図をご覧になってください。あなたが好きな内部監査員は、次のどのタイプですか?
A: 右折禁止の道路を曲がった所で立っている監査員
B: 右折禁止の道路を曲がる手前で立っている監査員
■被監査部門の方は、不適合を摘発されたくないので“B”を選ぶ人が多いと思います。不適合を摘発されても積極的に改善しようという気持ちになれませんし、摘発した不適合を監査報告書で経営トップに内部告発されると困りますからね。
■内部監査員の方は、不適合を発見して摘発したいので“A”を選ぶ人が多いと思います。不適合を見つけないと内部監査として認めてもらえないようですし、小さな人的ミスでも不適合を発見すると内部監査が成立するようです。内部監査は、指摘を出すことで偉くなったような錯覚に陥る業務なのです。
【解説】
自動車のハンドルを握ると、なぜか豹変する人がいます。今、社会現象となっている「あおり運転」は、運転手が自動車の運転に過度な自信を持っており、自分中心で世の中が動いている(自分専用道路)と勘違いされているのではないでしょうか?
これは、内部監査員やサプライヤー監査員にも当てはまる部分があります。
ISO 19011:2018年版では、内部監査員の資質として「広い心を持つ」ことが求められています。これは、QMS運用に対して、相手の意見を聞いて相手の取組みを尊重したうえで、改善すべき項目を顕在化して合意を得るコミュニケーションの能力を意味していると思います。
内部監査員には、サラリーマンの経験豊富な人が多く、ISO 9001:2015年版の要求事項を朗読して、文字を暗記しただけで理解していると勘違して自信過剰になり、上から目線で人を監査する危険性を持っています。
内部監査員やサプライヤー監査員の役割は、被監査部門の管理者(部長、課長)と協力して、お客様に提供する製品やサービスを、効率的(無駄なく早く)に製造する阻害原因を顕在化させて改善することです。それなのに、どうして監査になると、「泥棒と警官」の関係になってしまうのでしょうか? もしかしたら、監査の有効性の評価が、発見した「不適合の件数」で評価されるため、件数稼ぎになっているからかもしれません。このような評価を受けるなら、誰だって重箱のスミをつついて、多くの不適合を摘発しようとするでしょうね。根本的に、監査の「評価方法や評価基準」を見直すことから始めないと、改善にはつながらないでしょう。
私は、内部監査員やサプライヤー監査員には、「患者と医者」の関係を築いて欲しいと思っています。監査員達は、自分自身の性格まで変えられませんが、監査を実施する時だけでも、自分の言動に注意することを意識して取り組んで欲しいものです。(アイソス2020年4月号掲載記事から抜粋・編集)
内容(毎号4つのテーマを掲載) |
掲載頁 |
第1回 社員の人的ミスを摘発するから内部監査が嫌われる(2020年4月号) |
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1. 監査員になると立場が変わる |
335 |
2. 監査の分類と目的の違い |
337 |
3. 監査員と被監査部門との信頼関係 |
339 |
4. 環境と品質の多能工監査員 |
437 |
第2回 サプライヤー監査が製品パフォーマンスの鍵を握る(2020年5月号) |
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1. サプライヤー監査の目的と役割 |
341 |
2. サプライヤー監査の範囲 |
343 |
3. サプライヤー監査のインターフェイス |
345 |
4. サプライヤー監査の対象部門 |
347 |
第3回 外部提供者の体質改善をサプライヤー監査で指導(2020年6月号) |
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1. サプライヤー監査の実施方法 |
349 |
2. 組織の問題も顕在化して対応 |
351 |
3. 外部提供者の不信感を払拭 |
353 |
4. サプライヤー監査の事例 |
355 |
第4回 部門監査の適合性からシステム監査の有効性に移行(2020年7月号) |
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1. 箇条9.2内部監査の目的と役割 |
361 |
2. 経営トップが内部監査に関与 |
365 |
3. 既存のISOチェックリストを活用 |
367 |
4. 監査スケジュールにクールダウン |
369 |
第5回 組織体質を強化する漢方薬と品質問題を防止する特効薬(2020年8月号) |
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1. 内部監査の責任と権限 |
371 |
2. 内部監査と製品監査の関係 |
373 |
3. 内部監査員と製品監査員の能力 |
375 |
4. 内部監査の切り口が異なる |
377 |
第6回 経営トップの代行で事業活動を指導できる内部監査員を育成(2020年9月号) |
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1. 内部監査員のOJT指導が不足 |
379 |
2. 内部監査員に求められる力量 |
381 |
3. 内部監査員の知識と技能を評価 |
383 |
4. 内部監査員の訓練評価表 |
385 |
第7回 内部監査で管理者のマネジメント能力を育成(2020年10月号) |
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1. 映画俳優と舞台俳優の違い |
387 |
2. 内部監査員の資質と能力 |
389 |
3. 内部監査員の資質 |
391 |
4. 内部監査に適した人の割合 |
393 |
第8回 内部監査で事業活動のパフォーマンスを向上(2020年11月号) |
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1. 有効性監査に挑戦する必要性 |
395 |
2. 監査員のレベルで対策が異なる |
397 |
3. 内部監査を統括するマネジメント |
399 |
4. 内部監査で経営トップの関与を検証 |
401 |
第9回 品質データを分析して事業活動のボトルネックを改善(2020年12月号) |
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1. 事前準備で監査結果が決まる |
403 |
2. 予防処置から仮説を特定 |
405 |
3. 仮説を検証する監査のイメージ |
407 |
4. 被監査部門とコミュニケーション |
409 |
第10回 品質問題は、会議室ではなくプロセスの現場で起きている(2021年1月号) |
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1. 監査という言葉のイメージ |
411 |
2. 不適合の信頼性 |
413 |
3. 内部監査の事例 |
415 |
4. 現場監査で注意する項目 |
419 |
第11回 過去の記録から問題を摘発するより現在の作業を確認(2021年2月号) |
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1. 過去を指摘するより未来を検証 |
421 |
2. 不適合を改善課題に変える質問 |
423 |
3.不適合から原因を深掘りして遡る |
425 |
4. 是正処置の対策解答を事前確認 |
433 |
第12回 監査結果は、商品価値として内部監査報告書に集約(2021年3月号) |
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1. ビジネス文書の書き方 |
427 |
2. 監査テーマに対する結論を報告 |
429 |
3.是正処置の対策解答を事前確認 |
433 |
4. 是正処置の実施結果まで確認 |
435 |