コロナ禍における在庫確保と代替生産


コロナ禍による業務停止によって顧客へのサプライチェーンを止めるわけにはいきません。緩衝包装材メーカー・株式会社生出(おいづる)は、医薬品の緩衝包装材も取り扱っており、供給のストップが患者の容体を左右するだけに、コロナウイルス感染によって業務停止が起こらないよう、二重、三重の代替生産体制を整えています。

業務停止に備えた対応策



従来にも増して、近年は業務停止リスクを身近に感じるようになりました。本稿のテーマでもあり、現在も継続しているコロナ禍での対応は急務です。多くの企業でその対応を強いられている状況を鑑みても、BCP、BCMSのニーズは、今後ますます高まるものと推察されます。今回の新型コロナウイルス対策についてですが、弊社では徹底した感染症対策を早急に実施しました。体温、味覚臭覚異常、だるさなどの日々の体調管理に加え、マスク着用、手消毒・手洗い、うがい、換気、職場での除菌清掃などの衛生管理、仕切り板の設置、ディスタンス確保、互いに向かい合わず着席するなど飛沫感染対策を徹底しました。必要なコミュニケーションを取る一方で、感染を防ぐための配慮のバランスをどうとるか、当初は手探りの状況でしたが、現在は、上記対策は一定の効果を見出していると考えています。

一方で、コロナにより業務停止が余儀なくされることで、お客様のサプライチェーンを止める訳にはいきません。もちろん、生産量に合わせて稼働日を設定することは行いましたが、4月以降も工場は稼働し続けました。コロナウイルス感染により現場が止まる最悪の事態を想定して、次のように二重、三重の代替生産体制を整えることで業務を止めない環境を構築しています。



代替生産体制を多段階で準備する



当初は自然災害と言えば震災を想定していましたが、台風、洪水、感染症など業務停止リスクは高まるばかりです。当社では、2011年にBCPを策定しましたが、そこでは、操業停止を想定し、多段階での対応策を用意しています。新型コロナウイル蔓延時にも、これを応用して対応することができました。弊社の職場は大きく分けると現場である工場エリアと管理部門である業務エリアに区分できます。当然、工場エリアと業務エリアの人の行き来を完全には遮断できません。業務エリアで感染者が出た場合、工場エリアで濃厚接触者が発生する可能性があり、場合により工場の操業を止めざるを得ないことが想定されます。このため、想定される感染者発生ケースに応じて、業務継続のための対策を多段階で打てる準備を行いました。



在庫確保と代替生産



第1の対策は在庫の確保です。通常は発注予測から1週間分をストックしていますが、これに在庫量を20%から30%増量し、3箇所に倉庫を分散して在庫を積み増しています。在庫ストックも使用頻度に応じて優先順位を決定しています。

第2の対策としては、協力会社による代替生産を構築しています。30年以上取引実績のある外注先に、弊社の操業に問題が発生した場合、総生産量の2割を代替生産してもらうように依頼しています。この協力会社では加工機械などの生産設備が弊社と同じで、品質基準も同等水準を確保できます。弊社から人員の応援を出すなどして稼働率を上げようとすれば、最大総生産量の5割をこの協力会社による代替生産でカバーすることができます。

上記で対応不可の場合は、第3の対策として、「相互委託加工契約」を締結している同業者に生産依頼を行う手はずになっています。相互に加工をカバーし合うという契約内容ですが、契約を締結した同業企業の所在地域としては関東圏に加え、長野、福島にわたり、計7社の同業企業と協定を結んでいます。緊急時のみではなく、平時から協力体制を構築することで緊急時における実効性のレベルを上げるようにしています。設計データのフォーマット統一、同一品質レベルの確保とレベルアップ、代替キャパシティの共有など、まだ課題は残されていますので、これら課題について、平時から協力して課題解決に取り組むようにしています。現在、7社と協定を結び、契約を締結していますが、今後、協定先を増やしていく方向で進めています。1社1社の企業規模は小さくとも、こうして複数社が集まり連携を図ることで、総合力で困難を乗り切ろうと考えています。(下図参照)






仕入先を増やさず関係を深化するサプライチェーン強化策(垂直連携)



仕入先へも協力要請を行い、サプライヤーとの連携強化を図っています。強化策としては、一般的には仕入先の拡大がありますが、弊社としては既存取引先との関係を深め、1社あたりの取引量を増やすように努めてきました。取引先を拡大させると発注が分散してしまい、返って関係が薄くなってしまうことを嫌いました。仕入先を今よりも分散化することでリスクを軽減しようとしたとしても、1社あたりの取引量は下がるため、弊社のBCPに対する共感や協力をかえって引き出し難くなると感じたからです。

仕入先を多角化するのではなく、特定の仕入先と考え方を共有し、関係を深化することで関係がとても良くなりました。取引先にはBCPの必要性を理解してもらい、仕入先の方で更なる信頼のおける委託先を確保してもらうという信頼をベースにした調達の連鎖が生まれ、このことが代替生産に更なる柔軟性を持たせたと実感しています。(下図参照)




(この記事はアイソス2020年9月号から抜粋したものです)