ISO 22000(食品安全)の実用ガイドのポイント解説


ISO/TC34/SC17/WG3(Handbook on ISO 22000:2018の作成担当作業部会)が作成しているISO 22000の2018年版の実用ガイドを、FSSC 22000日本代理人である湯川剛一郎氏が紹介。ISO 22000を理解するうえでのポイントが分かりやすく解説されています。このガイド、日本語訳は発行されないかもしれませんので、ぜひ本稿に目を通しておいてください。

ISO 22000:2018の公式解説書



さて、今月はISO 22000:2018の公式解説書である「ISO 22000: 2018−食品安全マネジメントシステム−実用的ガイド」(以下、単に「ガイド」という)を紹介する。ISO 22000:2005年版については「ISO/TS 22004:2005−食品安全マネジメントシステム−ISO 22000:2005適用の指針」が発行された。さらに2014年に改訂版が発行されたが、いずれの版についても邦訳は発行されなかった。また、規格や仕様書ではなくISOの出版物として、2013年にISOハンドブック「ISO 22000の使い方」が発行されたが、これについても邦訳は発行されなかった。ISO/TS 22004は、2018年版の発行に伴い廃止された。今回発行されるガイドについては、2018年にISO/TC34/SC17内にWG3が設置され、我が国からは荒木惠美子東海大学海洋学部客員教授、豊福肇山口大学共同獣医学部教授のほか筆者が参加した。2020年4月現在、発行に向けた最終段階にあり、ISO本部で英文のチェック、デザイン・レイアウト等編集作業が行われている。

今回は、ガイドの概略紹介ではなく、ISO 22000を理解する上で筆者が気になるポイントを概要として取り上げ、必要に応じ筆者の解説を加えていく。概要は全体を要約したものではなく、筆者が気になる記述を独断で抜き出したものであり、解説も筆者個人の見解である。なお、ガイドの邦文は筆者による試訳である。

ガイドの構成



ガイドの目次を図表1に示す。用語集では、ISO 22000で定義されていない用語について説明が行われている。第1章は、リスクマネジメントシステム規格全般に共通する解説、第2章は、ISO 22000:2018の全体像の説明、第3章〜第6章はISO 22000の箇条4〜箇条10の説明、第7章は、ISO 22000には含まれていない認証に関する説明である



まえがきと序文

まえがきでは、食品安全の特色は、消費の段階で食品に由来する危害要因が存在しないことであるとし、危害要因の混入はフードチェーンのあらゆる段階で起こりうるため、食品安全は、フードチェーンに関係するすべての関係者の総合的な努力によって確保されるとしている。序文では、冒頭に、このガイドが審査を行う認証機関のために作成されたものではないと断っている。

解説: このガイドが、認証機関や審査員がISO 22000を理解する上で役に立つことは間違いないが、ISO 22000に明示されていない要求事項が記載されているとの誤解を防ぐため、こうした記述が記載されている。

2018年版で導入された新しい概念として以下が列挙されている。
① 他のマネジメントシステム規格と整合するよう再構成されたこと
② プロセスアプローチの概念の明確化
③ 組織及び運用の2つのレベルのPDCAサイクルの導入
④ リスクと機会の概念が導入されたこと
⑤ 動物用食品(ペットフード)への適用範囲の拡大
⑥ 製品について定義が行われ、サービスを含むことが明確化されたこと
⑦ 新しい用語について定義が行われたこと(例えば、許容水準、処置基準、重要な食品安全ハザード)
⑧ いくつかの定義が見直され改善されたこと(例えば、管理手段、CCP、OPRP、PRP)
⑨ 利害関係者のニーズ及び期待の理解が導入されたこと
⑩ トップマネジメントのリーダーシップが強化されたこと(コミットメント、責任及び権限)
⑪ 外部で開発された食品安全マネジメントシステムの要素の使用及び管理方法の明確化
⑫ 文書化した情報の概念が導入されたこと
⑬ ハザード管理プランの概念が導入されたこと


解説: これらが、規格開発者が考える2018年版の注目点である。管理手段の考え方に直接影響するのは⑦、⑧、⑪及び⑬である。それ以外は⑤を除き上位構造に由来する概念である。⑤のISO 22000のペットフードへの適用は、システムを運用している食品企業には関係しないが、認証サービスを提供する機関にとっては顧客基盤の拡大につながる。ペットフードを適用範囲に加えることについては専門家の間で議論があったが、最終的に加えられることとなった。認証機関に所属する専門家やスキーム関係者に賛成の声が多かった印象を受けた。



用語集



用語集では、ISO 22000:2018で定義されていない用語の説明が行われている。ISO 22000以外の他のISO規格で定義されている用語も掲載されている。例を示すと以下のとおりである。

• 汚染物質(contaminant): 食品の安全又は食品の適切性を損なう可能性のある、意図せずに食品に加えられたあらゆる生物学的又は化学的物質、異物又はその他の物質。(筆者注:定義に従えば意図的に加えられたものは汚染物質とは呼ばない。因みに食品防御のため開発されたBSI PAS 96は一般的に汚染を指す場合「contamination」「contaminant」を使用し、意図的な汚染には「malicious material」「malicious contamination」等の用語を用いているようである)

• 外部コンサルタント(external consultant): 特定の分野(例えば、マネジメント、監査、科学技術)における専門的な助言を提供する目的で請け負う、組織に雇用されていない人。(筆者注:「請け負う」の英語は「hire」であり、常雇いではなく賃金を払って、短期間雇われる形態をいう)

• FSMSマニュアル(FSMS manual): 食品安全方針が明示され、当該組織のFSMSが記載されている、必須ではない文書。



上位構造、2つのPDCAサイクル及びISO 22000:2018における「リスクに基づく考え方」(ガイド第1章)



(1)プロセスアプローチ

プロセスアプローチについて、意図した結果を達成し、好ましくない結果を避けるために、組織の特定されたプロセス(食品安全マネジメントプロセス、達成プロセス及び支援プロセス)及びその相互作用をマネジメントするためのツール、と説明している。 ISO 22000におけるプロセスアプローチでは、以下の点の重要性が協調されている。

① ISO 22000の要求事項の理解及び履行
② 食品安全計画のプロセスとしての考慮
③ トレーサビリティのプロセスとしての考慮
④ プロセスのパフォーマンス及び有効性のモニタリング
⑤ 客観的な測定に基づいたプロセスの継続的改善

解説: ④はPDCAのC、検証である。プロセスのパフォーマンスとは、システムが定めたルールどおりに運営されていることをいい、有効性とは、その上でプロセスが期待した効果を発揮していることをいう。

(2)リスクに基づく考え方

リスクに基づく考え方の説明として、図表2が示されている。



解説: この図を見ると、ISO専門家のリスク分析の理解がよくわかる。ISO 22000:2005の議論をしていたとき、日本の専門家はISO 22000でも「リスク」の用語を使用するよう働きかけていた。しかし、CodexのCAC/RCP 1「食品衛生の一般原則」の附属文書(Annex)にriskの用語が出てこないことなどから、ISO 22000の本文にはriskの用語は用いられていない。議論の中で欧州のある国の専門家から「リスクは政府、ハザードは組織」との発言があった。リスク分析はフードチェーンの各段階で行われるべきであり、国が行うリスク分析、自治体が行うリスク分析、組織が行うリスク分析があるというのが私の理解であった。しかし、欧米の専門家の間では、リスク分析は規制当局が行うものであり、組織はハザード分析を行うというように、リスクとハザードの使い方の整理が行われているようであった。用語の使い方の整理であり、本質的な問題はない。HACCPでは、ハザードにリスクの意味が含まれていることがよくわかる事例である。

(3)リスクと機会

リスクと機会の理解は難しい。ガイドでは2つの例が示されている。概略を以下に示す。
【例1】 アレルゲン管理: 「工場では…を含む食品を製造しています」といった注意喚起表示を減らす機会に取り組むため、アレルゲンを含む食品と含まない食品の製造工程の分離を改善する。
【例2】 リサイクル: 生産設備でリサイクル水を使用すると,水の使用量の削減の機会につながるが、リサイクル水使用のハザード分析を行う必要がある。

解説: これらの例では、機会とリスクはトレードオフ(取引、より有利なものを得るため、何かを差し出す)の関係にある。このような例に遭遇するのは工程の変更など設計開発の段階であろう。一方、何らかの不具合が生じた場合に、単に原状復帰にとどまらず根本的な原因までさかのぼり解決を図ることも機会への取組みの例である。この場合はリスクへの対応を機会として生かすという考え方である。私はシステム運用の実態からこちらの方が理解しやすいと考えている。いずれにせよ、工程の変更に伴うリスクと機会を考えなければならないという点では同じである。



FSMSの枠組みの設計(ガイド第2章)



(1)タスク* 2.1:組織とその状況の理解

組織とその状況の理解に関し、求めるべき情報の例として、食品偽装、原料の入手可能性、食品廃棄物の削減、食中毒の発生、飲料水の入手可能性、新技術、従業員の教育レベル、地元の失業率等を挙げている。ISO 22000では食品偽装への対応は要求事項ではないが、GFSIは対応を求めている。抜き打ち監査も食品偽装対策の一環として各スキームが導入している。ガイドでは、ISO 22000がGFSI承認スキームであるFSSCの一部として運用されることに配慮し、食品偽装について言及した可能性がある。

ニーズや期待について理解すべき利害関係者として、ガイドでは図表3が示されている。原材料、消費者はすぐに思いつくが、組織を取り巻く利害関係者の範囲は広いので注意が必要である。(「タスク」はガイド各章の各節に該当する。なお、記述を省略したタスクもある)



(2)タスク2.4:食品安全マネジメントシステム(プロセス及び相互作用)

FSMSに必要となるプロセスと相互作用の特定について、図表4が掲げられている。インプットとアウトプットとの関係、それを達成するためのプロセス、検証で必要となる意図した結果、それを定量的に評価するKPIが整理されている。プロセスの概念を理解するためのよい資料となっている。



リーダーシップとコミットメント(ガイド第3章)



(1)タスク3.1:食品安全方針及び一連のFSMSの目標の起案及びその達成プランの作成

方針、目標及び計画の策定については、法令・規制要求事項及び顧客要求事項を含め、食品安全要求事項を考慮に入れる必要がある。また、目標はFSMSに特有のものであり、測定可能(実行可能な場合)及び達成可能であることが望ましい。

目標は、検証の際の評価基準になる。システムが期待した効果を上げているかどうかは、目標を達成できたかどうかによる。測定可能でないと検証結果の評価が困難になる。

機会に関して、組織は、FSMSに関連する特定したリスクを考慮し、法令・規制要求事項に従って、より確実な製品安全、効率性、(そのための)新技術の開発、顧客満足の向上などについては、機会を検討する。リスク及び機会を考慮すべき場面としては、戦略会議、マネジメントレビュー、内部監査、食品安全に関連する会議、新しい製品及びサービスの設計及び開発の計画段階並びに製造プロセスに関すること等があるとしている。

解説: 機会に関する考え方はISO 22000独自のものではなく上位構造から来ている。マネジメントシステム規格の運用に際しては、様々な場面で、機会について考え、それを取り入れることが求められる。

(2)タスク3.5:組織のFSMSの外部で開発された要素の使用

FSMSに関する外部で開発された要素のうち、「外部で開発された管理手段の組合せ」(PRPs、OPRPs、CCPs)の使用については、ISO 22000:2005において、小規模の又はあまり進んでいない食品事業者に対して認められていた。ISO 22000:2018では、小規模企業等の管理手段から、あらゆる食品企業のFSMSのあらゆる要素へと拡張された。

FSMSの要素、例えば、訓練プログラム、力量評価アプローチ、リコールの手順、トレーサビリティシステム、ハザード分析、PRP、ハザード管理手段等は、外部から調達することができる。ガイドでは、外部の要素を採用する場合は、その要素は組織の特定の要求事項に適合させる必要があるとしている。外部で開発された要素の情報源には、業界団体、大学、政府及びその他の関連する知識の情報源を含めることができるとしている。

解説: 我が国では改正食品衛生法の本格施行に伴い、HACCPの制度化が行われる。これに伴い、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書が業界団体等でとりまとめられ、厚生労働省の設置する技術検討会の確認を得た手引書が厚生労働省から通知・公開されている。この手引書は、外部で開発された要素に該当する。

(3)タスク3.6:外部から提供されたプロセス、製品又はサービスの管理

外部で開発されたFSMSの要素が、計画の作成段階を支援するのに対し、外部から提供されたプロセス、製品又はサービスは、運用面を支援・代行する機能を持つ。組織に関する食品安全に影響を与えるような外部から提供されたプロセス、製品又はサービスとしては、例えば、ペストコントロール、清掃・洗浄及び消毒(殺菌・消毒)、輸送、保管、包装材及び製品の再包装、食品安全の訓練、試験所における分析、試験・検査装置の校正及びインフラストラクチャの保守などがある。

(4)タスク3.7:対内的及び対外的コミュニケーションの確立

コミュニケーションの目的は、食品安全にかかわる利害関係者に適切な情報を伝達すること、食品安全を担当するチームに、FSMSに影響を与える可能性のある修正のタイムリーな方法を通知することを確実にすることである。コミュニケーションには、フィードバックの仕組み、レビューのサイクル及び組織の環境の変化に積極的に取り組むための規定を含めることが望ましいとしている。

コミュニケーションの計画には、少なくとも次の事項が含まれる。

− だれが(差出人)
− だれに(受取人)
− 何を(送られる伝言)
− どのように(伝言が送られる方法)
− いつ(タイミング)
− なぜ(目的)


緊急事態及びインシデントに対する対応には以下の事項が含まれるとしている。

− 緊急時の手順に従って、関連する従業員及び外部組織(当局、消防隊、メディア等)へ伝達する。
− 緊急事態の影響を受ける製品/地域を特定する。これには例えば、消防士、救急隊による初期対応者による潜在的な汚染を含む。
− 安全でない可能性があるものとして製品を取り扱う。
− 修正及び是正処置のプロセスを通じて影響を受けた地域を評価し、復旧する。
− 影響を受けた場合、顧客へ伝達する。

(5)タスク3.10:製品の回収/リコールの対応プランの作成、実施、試験

回収/リコールに関して、組織は、関連するすべての規制要求事項に準拠する必要がある。これらの要求事項には、規制当局への連絡、顧客への回収/リコールの通知、回収/リコールの実施、回収/リコールの有効性を決定するための記録の保存が含まれる。組織が食品を輸出している場合、回収/リコールの計画は、対象となる輸出国で製品を回収/リコールできることが望ましいとされている。また、回収/リコールを開始する権限を有する要員を特定することが望ましいとされている。

解説: 我が国では食品衛生法、食品表示法の改正により、2021年6月からリコール情報の報告制度が導入されるので、保健所、消費者庁への連絡に留意する必要がある。

前提条件の実施:PRP及びトレーサビリティシステム(第4章)



(1)タスク4.1:組織が必要とするPRPsの特定

組織が必要とするPRPに関連して、施設とユーティリティについて説明が行われている。施設は、1つの地理的な場所での特定の運用に使用される特別の機能(例えばトイレ、ケータリング、クローク、実験室等)を提供する建築物又は装置のグループを意味し、ユーティリティは、蒸気、水、電気、冷却水、脱塩水、圧縮空気、冷凍及び廃水処理等、プロセスの運用に必要な補助的なサービスを意味する。

組織に必要とされるPRPを特定する上で参照すべき文書として、生産国、輸出先国の法令、規制、規則等、Codexの食品衛生の一般原則、ISO/TS 22002シリーズ、様々な指針、顧客要求事項などが挙げられる。

(2)タスク4.2:組織で実施されている(現在の組織で効果的な)PRPsのレビュー

組織が実施しているPRPと組織に必要とされるPRPのギャップ分析を実施する。ギャップがある場合は、欠如している(又は適切に実施されていない)PRPを含めた適用すべきPRPsの一覧表を作成させる。

PRPの実施に関しては、特定されたPRP1つずつについて手順及び指示書があり、実施し、維持し、必要に応じてレビューし、更新する必要がある。

(3)タスク4.4:PRPsのモニタリング(関連する場合)

PRPのモニタリングについて、パラメータが測定可能又は観察可能であること、モニタリングの方法及び頻度はPRPの効果のない実施を検出できるようにするのに十分なものであることなどの条件が書かれている。正しくないPRPの実施例として、ガイドではアレルゲン性食品との交差接触及びすぐに食べられる食品と接触する表面の不十分な清掃・洗浄及び殺菌を挙げている。

解説: PRPのモニタリングは、ISO 22000では求められないが、ガイドではPRPのモニタリングについて記載されている。ISO 22000の箇条8.7には、「PRP(s)及びハザード管理プランに関連した、モニタリング及び測定に使用する装置」という記述があり、PRPのモニタリングが否定されているわけではない。パラメータが測定又は観察可能なPRPであって食品安全を確保する上で重要なプロセスであれば、CCPとして管理されなければならず、ここで言うモニタリングは、検証に近いものである可能性が高い。

(4)タスク4.5:確立されたPRPsが効果的に適用されていることの検証

既存のPRPの検証では、下記のことが行われる。
① 食品安全の運用に関する責任のある管理者へのインタビュー
② 利用可能な文書化した情報(手順書、指示書及び/又はその他の文書)の調査
③ 関連する既存の慣行の適用の調査


検証方法の例としては、下記のようなものがある。
④ 目視による検査
⑤ 環境サンプリング(試験及び結果のレビューに従う)
⑥ 微生物学的サンプリング(試験及び結果のレビューに従う)
⑦ モニタリング記録の確認(例:温度)


解説: ⑤及び⑥はPRPの効果の確認であり、⑦はPRPが決められたとおりに実行されていることの確認である。④は目視の対象によって目的が異なる。例えば、洗浄の仕上がりを目視確認するのは効果の確認であり、手洗いの様子を見るのは決められた手順どおりに手洗いが行われていることを確認している。

(5)タスク4.6:製品のトレーサビリティに関する方法/システムの開発

トレーサビリティに関する指針はISO 22005に示されている。この規格はISO 22000:2018の参考文献[6]に示されている。



ハザード管理:OPRP及び/又はCCPによる重要な食品安全ハザードの管理(第5章)



(1)タスク5.1:食品安全チームの確立

食品安全チームは、製品、関連するハザード、技術及び関係する装置の知識を有する人々で構成され、食品安全マネジメント及びHACCPの原則に精通していることが望ましい。

(2)タスク5.2:ハザード分析を実施するために必要な情報の提供

ハザード分析を実施するために必要な情報を集めるため、チームは、最初に製品説明を行う。「製品」には、原料(包装材料を含む)、半製品及び最終製品が含まれる。説明には、製品の組成(物理的,化学的及び生物的特性)、最終製品を入手するための工程、シェルフライフの情報、包装材料、包装条件、ラベル表示、流通経路、意図した用途並びに合理的に予測される消費者の誤った取扱い又は誤使用が含まれる。ハザード分析を行うため、原材料の原産地に関する情報を収集することもある。

最終製品のpH、水分活性、抗菌剤の存在、塩分・糖分など微生物の成長に影響する条件を把握する。

解説: 最終製品のpH、水分活性、抗菌剤の存在などの情報は、最終製品がどのような考えに基づいて安全性を確保しようとしているのかを理解する情報であり、製品の重要管理点を導き出す際の重要な手がかりとなる。

(3)タスク5.3:工程フローダイアグラムの作成

フローダイアグラム作成の留意点として、下記のものを挙げている。
① 原料、材料中間製品・半加工製品等の搬入口
② 廃棄物、副産物、中間製品・半加工製品、最終製品の搬出口
③ 再加工及びリサイクルが行われる場所
④ 外部の専門家に委託したステップ及び外部委託した工程

また、関連する情報として、下記の収集を求めている。
① 5M(Methods〈方法〉、Machinery〈機械〉、Milieu/Environment〈環境〉、Materials〈材料〉、Manpower〈人材〉)を用いた手順の説明
② 工程のパラメータ(例えば、時間、温度、圧力、pH、aw〈水分活性〉、濃度、アウトプット)の説明
③ 既存の管理手段(例えば、手順、指示、技能、仕様)、及びこれらの要素がどの程度厳密に適用されているかの説明


フローダイアグラムは単純にすべきであるが、製品の組成の一部になり、接触するような、水、空気、原料、材料、半加工製品又は中間製品、並びに包装材料等、すべてのものを含めることが望ましい。並行する工程フロー及び再加工又はリサイクル、ある工程のステップから次のある工程のステップへの移動・輸送の手段の調査も重要である。材料、原料、容器、要員、空気、水、廃棄物等の流れを描くと有用な場合がある。

解説: フローダイアグラムは、ISO 22000の中ではPRPに関連する情報として項目のみが記載されている。しかし、フローダイアグラムはプロセスを可視化し、ハザード分析を行う上で非常に有力な情報を提供するため、ガイドでも詳しく説明されている。

(4)タスク5.4:食品に関連するハザードの特定

ハザードの特定に関しては、まず、発生することが合理的に予測されるすべてのハザードに関連する情報を収集し、次に、ハザードの特定を行う上で判断基準となる情報(規制、履歴、適正衛生規範の指針、疫学研究等)を収集する。これらに基づき、発生することが合理的に予測されるすべてのハザードを特定するとともに、最終製品におけるこれらのハザードの許容水準を定める。

解説: 許容水準は、ハザード管理の目標となる。ここで特定されたハザードが全て重要な食品安全ハザードになるわけではない。

(5)タスク5.5:ハザード評価の実施

ハザード評価は、上記で特定したハザードすべてについて行う。OPRPs又はCCPsにおいて管理される必要のある食品安全ハザードを特定する。実施されているPRPsが安全な製品を製造するために十分である場合、重要な食品安全ハザードが特定されないこともある。

解説: CCPやOPRPを設けないことは、時として取引先や審査員から理解されない場合もあり、勇気の要ることである。しかし、地域内で流通する食品を製造する業種では、多くの場合、製造段階は一般的衛生管理だけで対応し、消費者が消費するまでの取扱いや時間の管理により安全性を確保している。製造段階だけで安全性の確保を完結させる必要はないのである。

(6)タスク5.6:管理手段又は管理手段の組合せの一覧化、選択

特定された重要な食品安全ハザードを予防又は許容水準まで低減するため、管理手段又はその組合せにより管理する。管理手段の効果はその厳密さ(例えば、温度、時間、濃度、頻度)に依存することが多い。管理手段の評価に際し、手段の程度と効果の関係性に関するデータを入手すると役に立つ場合がある。管理手段は、他の管理手段と組み合わせて適用した場合、より効果的なことがある。

解説: 組合せの例としては、加熱処理後の急速冷却が代表的である。器具をアルコールや塩素などで殺菌した後に紫外線を照射することなども組合せの例である。

(7)タスク5.7:管理手段のカテゴリー分け、マネジメント、モニター、文書化

CCPにより管理するか、OPRPにより管理するか、管理手段の分類を行う。特に理解が難しいのはOPRPである。

OPRPのモニタリングは、測定又は観察可能な処置基準に基づき行われる。この基準は、妥当性確認の際に用いられた基準値に対応させる。処置基準が目視検査など観察のみによる場合には、観察プロセスは指導や仕様等により定義・文書化されなければならない。それぞれのOPRPに対し、モニタリング方法及び頻度は処置基準への適合可能性と処置基準からはずれた場合の結果の重大性に合わせ、ハザード管理計画で文書化しなければならない。

(8)タスク5.8:管理手段又は管理手段の組合せの妥当性確認

管理手段又は管理手段の組合せの実施の前に妥当性確認を行う。妥当性確認は管理手段の実施の前に行われるため、まだ現場のデータの蓄積がない。そのため、以前の妥当性確認の調査、若しくは管理手段又は管理手段の組合せのパフォーマンスの過去の知識、管理手段の適切性を実証するような統計的に妥当な実験データなどの文献(科学的又は技術的)を参照する。ただし、以前の研究は、管理手段を適用しようとしている生産条件に比べ、条件の相違(原料、工程及び製品)による限界があることを理解しておく必要がある。妥当性確認は、新しい科学情報又は規制情報、システムの逸脱、若しくは工程又は製品に対する重要な変更が行われた場合には、再検討が必要である。製品又は工程の変更には、原料の変更、工程のステップの変更、組織のマネジメントの変更、又は許容限界に応じて実施された変更、又は最終消費者によって使用条件の変更等が含まれる。

解説: 妥当性確認は、管理手段実施後、蓄積された検証データなどを基に必要に応じ見直しを行う。原料、工程及び製品の条件の変更の際にも見直す必要がある。

(9)タスク5.9:修正及び是正処置の確立、適用

影響を受けた製品の取扱いはOPRPとCCPとで異なる。OPRPの場合、処置基準からの逸脱によって影響を受けた製品は、ISO 22000の8.9.4.2に記載される条件に従って安全である場合(モニタリング以外の証拠により、管理手段が有効であったことを確認できた場合など)にのみリリースされる。そうでない場合、影響を受けた製品は、重要な食品安全ハザードが許容水準まで低減されることを確実にするための組織内外での再加工又はさらなる加工、若しくは他用途への転用、若しくは破壊又は破棄処理のいずれかとなる。CCPの場合、影響を受けた製品は、重要な食品安全ハザードが許容水準まで低減されることを確実にするための組織内外での再加工又はさらなる加工、若しくは他用途への転用、若しくは破壊又は廃棄処理のいずれかとなる。

不適合の原因を特定し、除去し、再発を予防し、プロセスを管理下に戻すことができない場合、是正処置の必要性を判断する。是正処置の例は、工程の微調整、欠陥のある装置の調整、手順のレビュー、訓練などである。

解説: 是正処置で達成できるのは原状復帰である。是正処置を行う場合でもある程度のコストが必要となる。効果との兼ね合いであるが、現状を上回るパフォーマンスを求める場合、工程の変更、装置の更新など、工程の根本的な変更を考えることがある。これが、機会への取組みにつながる。

(10)タスク5.10:モニタリング及び測定の管理(運用プロセス)

PRPs及びハザード管理プランに関連する活動をモニタリングし、測定するために使用されるソフトウェアは、その実施の前に妥当性確認しなければならない。指定された用途の範囲内で一般的に使用されている市販のソフトウェアは、十分に妥当性確認されていると見なすことができる。

解説: モニタリング及び測定の管理は、検証の一環として行われる。定められた管理方法がその通りに実施されているかは、効果を評価する前提となる。測定に用いられる機器の構成、分析のためのソフトの性能評価は正しいモニタリング結果を得るために不可欠である。

(11)タスク5.11:PRPs及びハザード管理プランに関連する検証を実施

検証活動について、2つのステップを示している。最初のステップは、個々の検証活動の分析(例えば、環境モニタリングの結果が、内部の仕様を満たしているかどうか)であり、2番目のステップは、例えば、折れ線グラフ上又は管理図上に個々の検証活動の結果を描くことによって、検証活動の結果の傾向を分析することであるとしている。

解説: 検証の目的は、①決められたことが決められたとおりに実施されていることを確認し、その上で、②プロセスが想定した効果を発揮していることを確認することである。上記の説明は検証に含まれるこれらの機能を十分に意識した記述となっていないように見える。

(12)タスク5.12:初期情報の更新

ハザード分析を実施するための初期情報の更新には、フローダイアグラムの更新も含まれる。

解説: 組織の活動は固定的なものではなく、常に変化している。変化に合わせ、場合によっては妥当性の再確認、さらには、機会を求めて工程の変更が行われることもある。これらに備え、ハザード分析に用いた様々な初期情報は常に最新の状況に更新しておく必要がある。



FSMSのパフォーマンスの評価(第6章)



(1)タスク6.1:組織の機能及び食品安全に影響を与える活動の内部監査の実施

組織は、一般に多くの監査(組織内の監査・外部の監査)に関与している。内部監査の適用範囲には、運用前の活動、施設、要員の衛生、ペストコンロールの監査等が含まれることもある。これらの監査は、他の監査ともシステムを形成するため連携していることが望ましい。例えば、ISO 22000による内部監査へのインプットの一つは、他の監査中に特定された是正処置である。

ISO 22000:2018の内部監査を一度に完了する必要はない。組織はまる1年以上かけて監査を実施してもよい。ただし最善の実施例は、ISO 22000のすべての箇条が認証のための監査の前に、少なくとも1年に1回は監査されることが望ましいということである。

解説: 他の監査による指摘への対応が適切に行われているか否かは内部監査における重要な確認事項である。

(2)タスク6.2:組織の全体的なパフォーマンス及びFSMSのマネジメントレビューを改善するために行われた決定の評価

マネジメントレビューのインプットとして、改善の必要性を特定し、改善措置の評価結果の証拠を提供するためにFSMSのパフォーマンス及び有効性の定期的な評価を実施する。

解説: 個々の改善措置を考え、実行するのはHACCPチームが対応する。しかし、それらの集大成であるFSMSのパフォーマンスについては、トップマネジメントが組織全体のパフォーマンスを評価し、改善措置や改善の方向についてマネジメントレビューのアウトプットとして実行に移す。

(3)タスク6.3:FSMSの改善

改善で重要な役割を果たすのはマネジメントレビューであり、それを主催するトップマネジメントの責任である。上位構造ではトップマネジメントの役割と責任が明確化され、かつ、重要になった。



ISO 22000:2018に基づくFSMSの認証プロセスに関する基本情報(第7章)



FSMS認証の仕組み、手順について説明が行われているが、概要については省略する。

解説: 認証機関では審査員が作成した報告について判定が行われる。判定では当該組織と関係を持たない専門家が、報告の妥当性について確認を行い、問題がないと判断されれば認証機関による認証が認められる。つまり、認証のための審査を行った審査員が認証の最終判定を行えるわけではないのである。

審査員は判定会議に出席し、判定員に対し必要な説明を行う場合もある。組織が審査員に対し十分な説明を行えなければ審査員も判定員を納得させる説明を行うことができない。

審査の現場で審査員に反論し、論破するだけでは認証はもらえない。審査員の質問は組織に対する意地悪で聞いているのではなく、判定員から聞かれたときに納得できる回答ができるように聞いているのである。

審査に当たっては、審査員のそうした立場にも思いを馳せ、審査員が判定会議で困らないよう、認証を支持する力強い材料を持たせることが重要である。


(この記事はアイソス2020年6月号から抜粋したものです。湯川剛一郎氏の連載記事はアイソス2020年4月号から9月号まで6回にわたって掲載されています)


執筆者: 湯川 剛一郎 氏

湯川食品科学技術士事務所 所長。1976年京都大学理学部生物物理学科 卒業。同年農林水産省入省。食品流通局(現消費・安全局)、独立行政法人農林水産消費技術センター(現農林水産消費安全技術センター(FAMIC))企画調整部長、同横浜センター所長、同理事等を経て2008年退職。2008〜2012年日本食品分析センター参与、2012〜2018年東京海洋大学教授。2018年4月から湯川食品科学技術士事務所所長。2018年6月からFSSC22000日本代理人。専門は、食品関連法規、食品安全行政、HACCP、食品安全マネジメントシステム、食品表示等。TC34/SC17国内検討委員会委員、同食品安全マネジメントシステム専門分科会委員。公益社団法人日本技術士会農業部会長。